2026年7月22日水曜日

那由多計画の「ユニオミスティ」が大傑作!

 

札幌出身の「プロビデンス」が1990年に発表したデビュー・アルバム『伝説を語りて』」は、久保田陽子という強力なボーカルと、塚田円の分厚いキーボードとを中心とした、パワフルな演奏と複雑な楽曲と高度なアンサンブルが魅力の、恐ろしくハイレベルな作品だった。

その塚田円のバンド「那由多なゆた計画」が今年2026年にリリースした3rdアルバムが、この
CD2枚組の超大作ユニオミスティ』だ。

《メンバー》
 月本美香:ボーカル
 世良純子:ボーカル
 重本遼大郎:ドラム
 塚田円:キーボード、カスタネット
《サポート》
 栗谷秀貴:ギター
 国分巧:ベース、インスタコード

とにかくツイン・ボーカルに、言葉を失うほど圧倒される。それもそのはずで、一人は、かつてプログレッシヴ・ハードロック・バンド「マージュリッチ」の第三期からボーカルを務め、現在はアルハンブラでも活躍中の、〝狂気と驚異のハイトーンボイス〟世良純子、そしてもう一人は、同じく「マージュリッチ」第八期からのボーカルを務め、「浪漫座」のボーカルとして「ページェント」の後を継ぐ傑作アルバム『綺麗な人たち』(2026)を作り上げた、〝パワフル&変幻自在ボイス〟の月本美香なのだから。

この二人の圧倒的な声量と、多彩な表現力と、正確なピッチが、まさにここにしかない〝プログレッシヴ〟な世界を作り出す。このような音楽は聞いたことがない、と思えるほどの衝撃である。

まず驚かされるのが、歌のほとんどすべてが二人のハーモニーで構成されている点だ。それも、一人がメインメロディを力強く歌い、もう一人がサビの部分でハモるという一般的なハモリではなく、二人のボーカリストがフロントに同列に並んで、力強く、表情豊かに声を重ね、時にせめぎ合い、時に溶け合いながら、ぐいぐいと曲を引っ張っていくのである。これが実に新鮮なのだ。

加えて、微妙なピッチコントロールが要求される非常に高度なハモリが随所に含まれているのも、聞いていてゾクゾクする。それぞれ個性的な声ではあるが声質は似ているので、ロックでは中々聴くことのできない、奥深い響きを体験できるのだ。

そして、このハイレベルなツイン・ボーカルが歌いまくる曲が、どれも変拍子満載ながらも難解に陥ることなく、むしろ意外なほどキャッチーであることも、大きな特徴だろう。すべての作曲を行なっている塚田円のバランス感覚の見事さである。

これは1970年代の、まだジャンル化される前の有名バンドが持っていた「構成が複雑であったり、演奏が超絶であったり、アプローチが実験的であったりしながらも、印象的なメロディがあって、曲としてはポップに聞けてしまう(イエスがその典型的なバンド)」という特徴を、引き継いでいると言っても良いかもしれない。

そしてまた、この強烈なボーカルに負けじと繰り広げられる、ハードでテクニカルな演奏も素晴らしい。最初はどうしてもツイン・ボーカルに耳を奪われてしまうが、堅実で重厚なバンドサウンドが、このツイン・ボーカルを支えているのだ。個人的には生々しいドラムスの音が良かった。

さらに客演メンバーのプレイも光る。「美狂乱」の須磨邦雄によるギター、「ファンタスマゴリア」の藤本美樹によるヴァイオリン、「TEE」のフロントマン今井研二によるフルート、「ドリーム・シアター」や「プラネットX」などの活躍で知られるデレク・シェリニアンのキーボード、ギターのように歪んだ音を聞かせるフェイ・ターンのテルミン、繊細な音色が美しいwaraのピアノ。誰もが一曲での参加だが、それぞれにとても印象的なプレイを披露してくれている。特に藤本美樹の、短いけれど鬼気迫るヴァイオリンが素晴らしい。

しかし、これだけのメンバー&サポート&客演たちによる強烈なパワーを前にしても、ツイン・ボーカルはびくともしない強靭さを持っている。

まさに、ここにしかない音楽、ここでしか聞けない〝プログレッシヴ・ロック〟の誕生である。