2011年8月に「第一集」が発売されてほぼ1年。「I【アイ】第二集」が7月に届いた。
いがらしみきおは「ぼのぼの」の世界に魅かれてファンになり。ホラー大作「Sink」でそのストーリーと絵に圧倒され、ホラー作品集「カンジョリ」を経て読み始めたのがこの「I【アイ】」であった。
「Sink」の日常生活における不気味さも相当なものであったが、「I【アイ】」の大河小説的展開に散りばめられた異様さも凄まじいものがある。
とにかく絵が抜群に上手い。こんな情景や場面を良く描いたなと思うことが多い。それは細部まで描き込んだリアルさとは違う。巨大な穴(村のゴミ捨て場)を描いて、その穴だけで不気味さと怪しさを感じさせてくれるのだ。
それはストーリーにも通じていて、恐怖心を煽ろうとか意外な展開で驚かせようとかいった、あざとさが全く感じられない。むしろ描いている世界に作者が圧倒されているかのように、淡々と物語が紡がれ予想もしない方向へと話が進み、その過程で次々と人が死んでいくのである。
それでいて殺人鬼の話とか超常的存在の話とか、既存の何かに絡めとられることなく、読者は暗い心の内側へ落ちて行くような、不思議で重苦しい感覚に襲われるのだ。
読んでいて
「この話には終わりはないんじゃないかな」
と思った。“劇的なクライマックス”は似つかわしくないからだ。 それは非日常的物語にオトシマエを付け、読者が日常に戻る瞬間なんだと思うが、この話は非日常的な出来事を描きながらも、日常に潜んでいる、普段気づかなかったり無視している抑え込んでいたりする感情を、次々と突き付けてくれているからじゃないかと思うのだ。
もちろん設定上の謎は多い。でも謎解きの物語ではない気がする。それは絵や音楽と同じで、自分の中の眠っている部分を刺激する道具じゃないかな。不安は最後に全てが明らかになるカタストロフのためにあるんじゃなくて、不安そのものを感じ続けるためにある。
第三集までまたおよそ1年待たねばならんのだろうなぁ。
長生きをしなければと思った。