緊急事態宣言もあと数日で解除の予定というくらい、
一応感染者数はウソのように減ってきたし、
二度のワクチン接種も終わったし、
何より、ずっと旅行を我慢していたのが
もう限界になっていたので、
せめて一泊だけでも温泉に行きたいと、
ずっと思っていたのだ。
そしてついに行ってきた。
お宿は群馬の山奥にある
薬師温泉かやぶきの郷「旅籠」(はたご)である。
温泉ではあるが温泉街ではない。
さまざまな場所の古民家を移築して
広大な土地に作り上げた
山の中の異空間である。
本当にその異空間っぷりが凄かったのだ。
まず川に向かってなだらかに下る丘の
一番上にある長屋門の到着。
見晴らしの良さと、緑の多さと、
人里離れた異空間を感じながら、
フロントがある下の本陣まで
枕木で出来た小道を下ってゆく。
長屋門から本陣までの道沿いには
時代箪笥、古美術品、昔懐かしい郷土玩具などが、
移築された民家の中に展示されている。
特に「木村家」のおびただしい人形の数は
恐ろしいほどの種類と量で、
茅葺きの建物の雰囲気とマッチして
圧倒されてしまった。
本陣(フロント)も含めて、
茅葺きの建物や里山的な風景が
隅々まで統一されているのが魅力だ。
それも、古民家の汚らしさは見事に消された、
心地よく美しい空間だ。
今回泊まるのは、半露天風呂付きの
まるで一軒家のような作りのお部屋。
本陣からいったん外に出て、
階段を上がって玄関から入るのだ。
部屋に入ると、古民家とともにあったような
古く美しい調度品が並んでいる。
籠を使った照明もあたたかい。
夕食は「深山の蕎麦会席」。
食事処も古民家で、
ゆったりとした個室のような席。
お魚も、お肉も、お蕎麦も
とても美味しゅうございました。
温泉は、シンプルだけど趣のある
薬師の湯(大浴場)と滝見の湯(露天風呂)。
ありがたいことに、時には独占状態になるほど
ゆったりとお湯につかることができた。
特に滝見の湯は、
名前の通り目の前の滝とまわりの緑を愛でながら
湯につかれるのが魅力だった。
そしてこの異空間ならではの醍醐味が、
夜の暗さなのだ。
外ばかりではなく、館内もかなり暗いのである。
エレベーターまでの通路も、
風呂のあるフロアーの廊下も、
物陰からなにか出てきそうなくらいの
昭和っぽい暗さなのだ。
写真は自動的に明るく補正されているが、
実際の暗さはこんなもんじゃないのだ。
これは妖しくて良かったなぁ。
そして翌朝も
チェックアウト後にそのまま宿に残って
遅めの送迎バスの時間まで
ロビーにいたり温泉を楽しんだりできたのだ。
あらためてロビーの面白さも味わった。
椅子が餅つきの臼でできてるのだ。
ということで、
場所もさほど遠くなく、
宿泊も一泊だけというものだったが、
実に中身の濃い、素晴らしい旅行であった。
美しい古民家が立ち並ぶ異世界で、
美味な食事と、ゆったりした温泉と、
かつてあった夜の闇と、
ゆったりした非日常的な時間を
贅沢に堪能させてもらったなぁ。