〝パンデミック〟という言葉もそうだった。
現実から目を背けて、
口にしてみたくなる言葉、使いたくなる言葉だ。
〝反転攻勢〟も、何だかカッコイイ。
劣勢を跳ね返して、逆転の倍返しをするような
高揚感と爽快さがある。
そんな言葉に踊らされて、
現実に血みどろになって人が死んでいることを忘れる。
ウクライナ兵が人間で
ロシア兵がまるでゾンビでもあるかのように、
ロシア兵が死ぬことに麻痺してゆく。
ロシアが一方的にウクライナに侵略したのだと言ったって
それは国と国との問題であって、
いつだって戦場で生死を掛けて戦うのは
一人ひとりの人間なのだ。
ウクライナ兵だってロシア兵だって変わらないのだ。
そこで血を流しているのは
あなたの知っている父や恋人や子どもと同じ
とてもとてもやさしい人かもしれないじゃないか。
そんな罪深い言葉を、
これみよがしにくり返し使っているメディアの
何と薄っぺらいことか。
地獄のような現実を、スリリングなドラマにでも
したいのだろうか。