スイス人の画家、デザイナー、HR・ギーガーの絵画・造形作品集である「WWW HR Giger Com (Taschen 25th Anniversary Series)」(TASCHEN, 2007)が届いた。
HR・ギーガーと言えば映画「エイリアン」の造形で一躍有名になったアーティストであるが、わたしはEL&Pの「恐怖の頭脳改革」などのアルバム・アートで知るようになった画家だ。
忘れもしない高校生の頃、池袋の西武デパートのどこかの一角に洋書の画集や写真集が置かれていたコーナーがあった。そこでわたしはギーガーの本来の作品群に出会った。
人間と機械と昆虫が融合したような、サイバーでエロティックで「カッコイイ」世界を“夢見て”手に取った彼の作品集には、ホルマリン漬けのような赤ん坊が無数に並んでいた。
「見ては行けない世界を見てしまった…」
瞬間にそう思った。しかし見てしまったからには記憶から消せない強烈な世界。甘美な吐き気を催させるような未知の快感。
おぞましいのだけれど妙に魅かれる絵の数々。その本にはそんな異様でグロテスクで、幼い高校生の想像力を吹っ飛ばす世界が描かれたいた。
そして本書である。ギーガーというと何となく平面的な構図が多いイメージを持っていた。色使いもモノクロームに近い金属的でリアルなものが多い気がしていた。
しかしここにはポップな色使いがなされたドローイングや、数々のデッサン、建造物の設計図、 立体物、そしてピンバッジまで、今まで見ることができなかった作品が多く掲載されているのが特徴だ。
しかしそれから数十年経って今あらためて見てみても、スゴい世界である。何かこう境界を越えてしまった者の力を感じるのだ。