2019年5月21日火曜日

「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967)

  
1967年のゴジラ作品で、シリーズ第8弾。
恐怖の破壊神の面影もなく、
怪獣バトルのヒール役とも異なり、
じゃあ〝ぼくらの味方〟かというと、そうでもなく、
基本的に人間や人間社会とは無関係に登場する
かなり異色な作品。

ミニラなるゴジラの子どもが登場するのだが

次第に、いわゆるブサ可愛く見えてくるのが不思議。
ミニラ絡みでユーモラスなシーンが多いのだが、
ミニラの演技、表情の捉え方、動きが、
あざといんだけど観客に媚びていない、みたいな
ちょっとプロフェッショナルさを感じさせるのだ。
だから、最初は思いっきり引いていても、
次第に引き込まれてしまうんだろうな。
  
ちなみにミニラに入っていたのは
俳優・スーツアクターで
〝小人のマーチャン〟と呼ばれた深沢政雄氏。
名演だと思う。
  
予算の都合で、大都会の破壊シーンが撮れず
何回の孤島が舞台として選ばれたらしいが、
映像が美しく、セットも充実している。
  
もちろんツッコミどころは多々あるけれど、
気象コントロール実験という大筋に、
美少女サエコや怪獣たちを絡めている脚本は、
観客を飽きさせないように良く作られているし、
ミニラが出てきて子どもは喜ぶだろうけど、
内容的には子ども向けではなく、
大人同士がしっかり演技しているのが良い。

そして何よりスゴイのが、

カマキラス&クモンガという、
爬虫類怪獣のデザイン的な素晴らしさと、
操演の見事さだ。
  
本作品では、いわゆる〝怪獣プロレス〟がない。
ゴジラの相手が、操演によって動くものだけだからだ。
でもこの動きが半端なくリアルなのだ。
造形的にも動き的にも、安っぽさがまったくない。
  
ゴジラに破壊神を求めてしまうと
この子育てゴジラは受け入れられないだろうが、
久しぶりにちゃんと見て、
実に丁寧に、一生懸命に映画を作っている感じがして、
とても楽しんでしまったのだった。
  
今だと非常に作るのが難しいと思われる
〝怪獣ファンタジー映画〟だね、これは。
きっとCGでは、このほのぼの感とか、
南海の桃源郷幻想、みたいな雰囲気は
出ないんじゃないだろうか。