2019年9月22日日曜日

「少女終末旅行」

おそらく世の中から数周回遅れで〝発見〟した、
「少女終末旅行」
まさにこのアニメでしか描けない、
良質な文学や映画にも匹敵する
この世の終わりの物語。

この世界から人がいなくなり、
ほとんど最後に残された二人となった
チトとユーリが、
ケッテンクラートに乗って
とぼとぼと日々の糧を探し歩く物語。
  
  
どう考えても絶望しかない世界で、
まるでその世界を看取るかのように
二人は廃墟となった世界を動き回り、
世界の記憶に思いを馳せる。
そんな二人の言葉や行動や、周囲の風景に、
悲しみや、絶望や、懐かしさや、ささやかな喜びが、
つまり、まさに、死を前にしたような感情が、
じんわりとこちらの心に迫ってくるのだ。

大きな事件は起こらない。
人類が滅亡した理由も明かされない。
チトとユーリの出自も語られない。

生活感がかすかに残る建物。
鉄骨やパイプが縦横に走る巨大な建造物。
人がいなくなって意味をなさなくなっても
ひたすら動き続ける機械。
  
チトのリアリスティックで冷めた言葉も、
二人がベタベタした関係になることを拒んでいるし、
時折ユーリの見せる突発的な行動は、
楽天家を装うユーリの絶望の現れか、
常にどこかにかすかな緊張感を孕ませていて、
どちらも、この物語、この世界観に合っている。
  
そして、廃墟を描く背景美術の美しさ。
主人公二人のユルイキャラクター造形と
ケッテンクラートの3DCGななめらかな動きと
薄暗く人工的な建物の廃墟を
違和感なく一体化させた見事さ。

久しぶりに、ぐっと来るものを見てしまった。
Amazon Primeで全12話を鑑賞。
この世界観にどっぷりはまった。
死ぬのなら、こうして死にたいものだ。