2019年11月21日木曜日

「ねじの回転」の翻訳例をご紹介

訳者泣かせの難解な文章が続く「ねじの回転」だが、
ようやく第二稿が終わろうとしている。
  
そこで、何とか少しでも分かりやすい訳を、
そして、意味の通る日本語をと、
奮闘努力している姿を、
再び少しだけ、ご紹介してみたい。

「わたし」が勝ったのか負けたのか分からない訳が多いが、
ちょっと違うんじゃないかと思った。


Into this attitude Mrs. Grose immediately and violently entered, breaking, even while there pierced through my sense of ruin a prodigious private triumph, into breathless reassurance.
Henry James, "The Turn of the Screw", 1898.

そこへグロース夫人が飛び込みました。もうぶち壊しだと思いつつ、私だけが勝っているという直感が内心に射していたところへ、グロースさんが息もつかずに割り込んできて、フローラを安心させようとしたのです。
小川高義 訳(新潮社 2017)
  
グロースさんがたちまちその態度に強く引き寄せられ、フローラを慰めはじめるのが見えましたから。破滅の予感と、それを貫くわたし個人の勝利の感覚がありました。
土屋政雄 訳(光文社 2012)
  
するとそのフローラの態度を思いやったグロース夫人が、即座に無理やり口を挟んできて、息もつかせずに、励ましの言葉をまくしたてたのです。夫人個人の勝ち誇ったような思いが、わたしの破滅したという気持ちを突き刺すことになるとも知らずに。
毛利孝夫(望林堂 2019.11. 刊行予定)


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