2019年11月4日月曜日

「ねじの回転」を平易に訳すことの難しさ

訳者泣かせの難解な文章が続く「ねじの回転」だが、
ようやく第一稿が終わろうとしている。
  
平易な表現で、どれだけ〝話者〟の心の動きを
読者にスムーズに伝えられるかが
大きな課題なのだが、
果たしてどこまで上手く訳せるか。

奮闘努力していることだけは
分かっていただけるとうれしいな。

He appeared now to be thinking of something far off and that reached him only through the pressure of his anxiety. Yet it did reach him. “Did I _steal_?”
Henry James, "The Turn of the Screw", 1898.

マイルズは何かしら遠くにあることを考えるかに見えました。それは不安感に絞られるように、やっとマイルズに届くのでしたが、とにかく届いたのです。「盗んだってこと?」
小川高義 訳(新潮社 2017)
  
遠くの何かを思い出そうとしているようでした。最後には——不安に後押しされてようやく——思い出したようです。「ぼくが盗んだ、と……?」
土屋政雄 訳(光文社 2012)
  
マイルズは今、遠くにある何かのことを考えているように見えました。そして、不安に押しつぶされそうになりながら、その何かがようやく頭に浮かびました。そう、マイルズは、わたしが言わんとしていることが分かったのです。「ぼくが、〝盗んだっていうの?」
毛利孝夫(望林堂 2019.11 刊行予定)

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