Gipsy Kings(ジプシー・キングス)が大好きである。哀愁のメロディー、かき鳴らされるギター、ルンバ・フラメンカの軽快なリズム、情熱的なボーカル、美しいハーモニー、繊細でありながら血が騒ぐギターソロ。元気が今ひとつな時に立ち向かうエネルギーをもらえたり、凝り固まったアタマをほぐしてくれたりしてくれる。
Gipsy Kingsは1987年「Djobi,Djoba(ジョビ・ジョバ)」「Bamboleo(バンボレオ)の大ヒットで、当時のワールドミュージック・ブームの火付け役&牽引役的に有名になった。しかし彼らの音楽活動の歴史は長くもっと、以前から今同様の熱く哀愁漂う音楽ではあったが、ギターと歌にパルマ(拍手)を加えたシンプルなものだった。この時代に彼らはGIPSYKINGSとして「ALLEGRIA」と「LUNA DE FUEGO」の2枚のアルバムを残している。
しかしそこにロックやポップス的な要素を取り入れ、ドラムやベースを入れてリズムを強調したり、キーボードを入れて音に厚みを加えたりした結果、泥臭さや音の単調さが消え、洗練された新しいエスノ・ポップスとして受け入れられたのだった。そしてグループ名はGIPSYKINGSからGipsy Kingsへと変わり、上記のヒット曲が含まれているアルバム「Gipsy Kings」で人気が爆発する。
「Gipsy Kings」の成功の後、バンドは基本の曲のあり方は変わらなくても、アレンジ面で様々な試行錯誤を行っていった。それは新しい音楽作りへの挑戦でもあったが、反面、様々な楽器の導入やリズムの強調が、基本のギターと歌が持つ魅力とぶつかってしまう場合もあった。
そんなこともあって、わたしがよく聴くのはGIPSYKINGS時代のアルバムなのである。日本では「Djobi,Djoba」(邦題は「ジョビ・ジョバ/ベスト・オブ・ジプシーキングス」)として「ALLEGRIA」と「LUNA DE FUEGO」の2枚のアルバムを1枚にしたものが出ている(ただし全曲収録ではない)。
このアルバムでは、ほぼギターと歌とパルマだけで曲が演奏される。実にシンプルでそれぞれの良さを堪能できる。さらに曲間に話し声や会話が入っているのが良いのだ。音楽仲間が集まって「次はあの曲をやろうぜ」みたいな、楽し気な雰囲気がある。目の前で演奏しているような感じなのだ。
しかし曲自体はユルくはなっておらず、歌が始まると情熱と哀愁とスピード感あふれる世界が広がるのは、後のGipsy Kingsと同じだ。むしろ小細工のないストレートな力を持っている。特に「Amor D'Un Dia」は言葉はわからなくても泣ける一曲。
Gipsy Kingsの本質に触れられる傑作、ファン必携の一枚。
ちなみに、Gipsy Kingsになってからのお気に入りは、勢いのあるセカンドの「Mosaique」(邦題は「モザイク」)と、「Roots」で原点回帰した後の2007年に出た最新作「Pasajero」ってとこでしょうか。こちらは余裕のある温かさが魅力。