生きようとすればするほど人を切り裏街道に落ちて行く市
罵倒され蔑まれる悲しさや悔しさと
最後に爆発する超人的な剣さばきの爽快感
でも最後まで抑圧された暗さは消えない
勝新座頭市の殺陣の凄さは唯一無二だ
血まみれでもがき苦しむようなリアルな切り合いではない
逆に段取りが見え見えなチャンチャンバラバラでもない
確かに決まり事に則った型ではあるのだけど
きちんと切れる間合いで無駄なく剣を操る
そのスピードと身のこなしに殺気がある
この動きだったら必ず切られるだろうな…という
圧倒的なリアリティと存在感とカッコ良さがあるのだ
例えば『座頭市喧嘩旅』(1961)
勧善懲悪ではなく
とにかく目の前の人を助け
今を生きることだけしかない市を描く傑作
冒頭の40秒
賭場の場面の薄暗い深みのある画面
市の穏やかで凄みのあるセリフ回し
そして鮮やかなロウソク切り
このタメと残心
鞘から剣を抜き鞘へ戻るまでの
太刀が見えないほどの素早さと太刀捌きの美しさ
そして真っ二つに割れるロウソクという
ケレン味たっぷりな見事な演出
最後に発せられる自嘲気味な決め台詞
これにグッときたら全編見て欲しい
ラストの大殺陣ももの凄い緊張感である