2009年3月23日月曜日

突然マイブーム歴 <ちあきなおみ>

年代的に「喝采」でレコード大賞を取った(1972年)とかいった断片的な記憶はあった。ものまねの対象によくなってたり、「タンスにゴン」(金鳥)のコマーシャルに出ていたりという記憶もある。でも特に好きな歌手というわけでもなかった。
   
   
そう言えば、年末恒例NHK紅白歌合戦(1977年)で「夜 へ急ぐ人」を歌った時の、髪を振り乱して、まるで何かに取り憑かれたみたいに鬼気迫る姿もうっすら憶えている。「おいで、おいで〜」が相当恐かった。年末のお祭り的 紅白の雰囲気に合わない。合わないんだけど浮くというより、一瞬ちあきなおみ世界にしてしまったような凄みがあった。唖然である。今でもYouTubeで見られるかもしれない。

ちなみにその紅白で白組司会者をしていた山川静夫アナウンサーが思わず「何とも気持ちの悪い歌」と言ってしまったというエピソードが残っていると言うが、そうだろう、うなずける。
   
   
そして彼女のことは忘れていた。ところが2006年のお酒のコマーシャルで美しいアカペラコーラス(一人多重録音)が流れ、耳について離れなかった。これがなんと、ちあきなおみの歌う「星影の小径」だったのだ。安定した甘く深みのある声、細心の注意を払って最大8声が重ねられた優しい優しい声が、ユニゾンからハーモニーへ広がっていく時のすばらしさ。もう絶品。できれば一曲すべてアカペラで通して欲しかったくらい。
CDを買いあさることになってまず思ったのが、彼女は強烈に歌が上手いということ。演歌からムード歌謡から、ニューミュージックからポルトガルの国民歌謡ファドまで、すべて自分の歌にして歌う。情感を込めすぎない。技巧を前に出さない。そして情景が浮かぶ。
実は 2000年に出した6枚組CDボックス「ちあきなおみ・これくしょん ねぇあんた」が、1万円を越える価格ながら異例の大ヒットとなって、以降ちあきなおみ再評価のブームがじわじわと高まっていたらしい。それは全然知らなかった。だからブームの後追いのマイ・ブームなのだ。
彼女は1992年、夫が亡くなるとともにマイクを置く。そしてすべての公式の場から姿を消し、未だに沈黙を守ったままだという。彼女の半生は「ちあきなおみ 喝采、甦る。」(石田伸也、徳間書店、2008年)に詳しい
   
   
ちなみに「星影の小径」の次に、ファドの日本語版「霧笛(難船)」が大のお気に入り。もうこれらの曲が流れ出すとわたし動きが止まります。動けなくなります。