2008年に河出文庫で復刊した「ノーライフキング」(1988)で子供たちの“リアル”に迫り、「ワールズ・エンド・ガーデン」(新潮文庫、1993年)で1995年のオーム問題を予見するかのような、伝道師(グル)を中心とした解放区ムスリム・トーキョーを描いた、いとうせいこう。
彼の「解体屋外伝」(講談社文庫、1996年)は、洗脳のプロ・洗濯屋(ウォッシャー)と洗脳外しのプロ解体屋(デプログラマー)の戦いという、設定だけ聞いてもワクワクするほど魅力的な、ある意味“オーム以後”のリアルな世界を描いた傑作。乞う復刊。
そこに出てくる忘れられない言葉がある。解体屋自身が自分を見失いかけた時、友から繰り返しかけられる言葉。
「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある。」
「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある。」
「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある。」
そして解体屋は失いかけた自分を取り戻す。
それは今でもわたしのココロに響く言葉の一つ。
「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある。」