2010年12月22日水曜日

人身事故列車に乗り合わせる

乗っている電車が駅のホームに滑り込む
でも停車位置がおかしい
停車してもドアが開かない
電車の外の動きが慌ただしい
駅職員が走っている

わたしがドアによりかかっていた場所から
一番近い連結部分付近から突然声が響く
すでに線路に降りていた駅関係者がいたらしい
足下からの声は異様に大きく聞こえる

緊張感のある声がホームとの間に飛び交う

ホームの人々が連結部分を取り巻くように集まってくる
わたしが寄りかかっているドアの外
コンクリートの壁とのすき間にも駅員がやってくる
ドアに寄りかかっていた女性が驚いて飛び退く
  
電車は全ての車両がホームに達しているわけではないらしい
そのせいかドアはいっこうに開く気配がない
車内にも緊張とイライラ感が漂い始める
舌打ちを繰り返す男性がいる
赤ん坊が泣き出す
その赤ん坊の若い母親が「うるせえんだよ」と言う

人はこんなにも辛抱ができなくなっているのかと思う
カラダが少し緊張する

誰かが非常ボタンを押したらしい
駅職員が2つ隣のドアまでやってくる
中年の女性が叫んでいる
ホームへ出してくれと叫んでいる
声は次第にヒステリックになり
ドアをドンドンと叩き始める

不穏な空気が重さを増す

でも例えば閉所恐怖症とかパニック障害とか
こういう状況には耐えられない人はいるはずだ
ましてホームが見えていることが
閉じ込められ感を増すのかもしれない
我慢できないことを責められないことだってある

車内に放送が入る
救助のためにパンタグラフを下げて
電車全体の電気を切るので
乗客は全員外へ出て下さいと告げられる
駅員によって手動でいくつかのドアが開けられる
ありがたいことに
乗客のほとんどは落ち着いて移動を始める
われ先にと殺到するようなことはない

わたしの乗っていた場所の
ほぼ下に被害者が横たわっていたという事実
それは避けられないこととは言え
大きなショックであった

気を落ち着けるためにも
わたしは電車の目的地である場所まで
1時間近くかけて歩いたのだった

いや恐らくショックのかなりの部分は
あの車内の不穏な雰囲気によるものだろう
パニックに巻き込まれることの恐怖みたいなものを
あの時わたしはちょっと感じ取ったんだろう