定刻通り午後7時に、まだライティングされていないステージに、メンバーが現れる。楽器を手に準備完了。ライトがステージを照らす。初来日の1st gigが始まる!感無量。
そこからはもう圧倒的な変拍子の嵐。恐らくあの場で初めて聴いた人は曲展開についていけない。曲の区別もつかないかもしれない。目眩がするほど複雑なアンサンブルが、無理なくスムーズに流れていく。ヘヴィーな音圧と繊細でアコースティックな響きのレンジの広さが半端ではない。
曲は新作3rd「Viljans Öga」から2曲と過去作から3曲。合計約70分のステージ。3rdの特徴でもあるフルートを中心としたアンサンブル。センターでAnna Holmgrenがフルート、テナー・サックス、リコーダー、メロトロンと大活躍だ。特にテナー・サックスが曲に与えるインパクトが凄い。重戦車が突進するような破壊力。
心配された新メンバーも堂々とした演奏。ドラムスのErik Hammarströmは、Mattias Olssonばりの、テクニカルながら全てをなぎ倒すような無骨で荒々しいプレイ。キーボードのLinus Kåseはソプラノ・サックスやバッキング・ボーカルもこなす。出戻りというかたちになったギターのTord Lindmanは、さすがに3rdアルバムの新曲はちょっと大変そうな場面もあったが、過去曲は活き活きとした演奏。加えて彼の復帰によりボーカル曲も復活した。
最初からインスト曲で容赦なく畳掛け、最後にMCを挟んでそのボーカルが聴ける「Kung Bore」でフィナーレ。この曲がやけに“普通”に聴こえるほど、インスト曲で押しまくった構成は強烈だった。
低音を中心としたフルート、メロトロン2台(メロトロンとサンプリング・キーボードか)、重厚なベースが醸し出す幽玄な世界も、どこか狂気を孕んだような彼らならではのもの。個人的には3rdからの曲「Längtans Klocka」や「Sorgmantel」が放つ、嵐の向こうに垣間見られるような深い悲しみのようなものにシビレタのだった。
次のCrimson Projectが、ノリの良い曲で観客を盛り上げていたのとは実に対照的なステージだった。かと言って分かる人だけ分かれば良いという自己満足的なものでは決してなく、とても誠実で真摯な演奏と音楽であり、もう圧倒されっ放しな70分だった。もっと見たかったなぁ。
でも…欲を言うならキラー・メロディーを持つ3rdの曲、「Ur Vilande」か「Längtans Klocka」が聴きたかったなぁ。二日目、三日目で演奏したら恨むぞよ。
次はぜひ単独講演を!