2010年6月11日金曜日

今プログレッシヴ・ロックの聖地は日本である

もともとピンク・フロイドのアルバム「原子心母(Atom Heart Mother)」の、宣伝用帯に書かれたコピーが元となっていると言われる“プログレッシヴ・ロック”という言葉。この“progressive rock”あるいは“prog rock”は、今40年の時を経て世界で使われる言葉となった。

それには1970年代から、恐らく世界で唯一“プログレッシヴ・ロック”的音楽を愛し守り続けたのがこの日本だったからに他ならない。

1979年代に始まったキング・レコードの「ヨーロピアン・ロック・コレクション」は、恐らく世界に類のないコレクション・シリーズだったと思うが、なんと10シリーズも続き世界各国の貴重な音を届けてくれた。それがまた1980年代の国内インディーズにおけるプログレッシヴ・ロックの隆盛にも、大きく繋がったと言える。

さらに1990年代に入るとこのシリーズがCD化されたかたちで再度登場し、同時期にマーキー社から続々とヨーロピアン・ロックのアルバム集成が発表される。関連雑誌も1980年代の「フールズメイト」、1990年代の「MARQEE」、2000年代以降続いている「Euro-Rock Press」と、途切れることなく続いている。最近は「ストレンジ・デイズ」も頑張っているし。

こうして一番低迷していた時期を、日本は情報を途絶えさせることなく、むしろきちんと評価し、整理し、発信し続けることで乗り切り、2000年以降の新たなプログレッシヴ・ロック・ムーヴメントを迎えることになるのだ。

その間に海外でこうした音楽に感心を持つ人たちが、日本の情報に大きな重きを置いていたことが、自然と日本発の“プログレッシヴ・ロック”という言葉をインターナショナルなものへと変えていったのだと思われる。だって「ビル・ブラッフォード自叙伝」にも『今でもプログレッシヴ・ロックが好きかい?』っていう章があるくらいなんですから 。

ちなみに今年2010年のプログレッシヴ・ロック関連来日予定アーティストが凄い。
   イット・バイツ(3月)
   クラウス・シュルツェ(3月)
   オザンナ(4月)
   エイジア(5月)
   エディ・ジョブソン(6月)
   マグマ(7月)
   アラン・ホールズワース(7月)
   スティーヴ・ハケット(8月)
   ルネッサンス(8月)
   マウロ・パガーニ&フラヴィオ・プレモリ(9月) 
なんですかこれはっていう程の充実度。そしてそのほとんどが世界ツアーとかではなく、日本だけの単独公演なのだ。中でもマグマなんて日本最大の野外音楽イベントフジ・ロック・フェスティバルに出演なのである。ぜひ知らない人々に腰を抜かしてもらいたいなぁ。

かつては日本公演だと、明らかに手を抜いているのがわかる外国のミュージシャンもいたと聞く。しかし日本の、クラシック音楽のように静かに集中して音楽を聴くという聴衆の態度は、プログレッシヴ・ロックのような音楽を演奏する側にとってはとても有難いことなのかもしれない。そして今、日本だからやって来るというアーティストが増えているのだ。

なんかうれしいのである。わたしも一つキング・クリムゾンの「Red」を叩くことを夢見て、ドラムの練習を励むとするか。何かの拍子でそんなチャンスがないとも限らないし。みたいな。