昔読んだような気がするのだが
だとしても、ずっと忘れていたし、
昔々の田舎のことだから、
「哲学」を勉強したり
「太宰治」を読んだりすると、
人間とか人生とかが嫌になって
自殺しちゃうんじゃないかみたいな
変な思い込みの中で育ったから、
太宰治だけは避けて
読んでいなかったかもしれない。
でも、たまたまKindleで
「人間失格」と「斜陽」を読んだら
ハマってしまったのだ。
この退廃的な雰囲気と、
どうにもやりきれない苛立ちや悲しみは
いろいろ経験してこの年になった今だからこそ
しみじみと分かるように思う。
時代に翻弄され、身を持ち崩した貴族という
特権階級特有の悲劇を描いているようで
実は、誰の心にもあるはずの
清く正しく美しく生きられない辛さ、
あるいは、
生きていること自体のやりきれなさが
実に巧みな文章で描かれているのだな。
特に「斜陽」の姉の手紙が素晴らしい。
切なく、哀れな、それでいて気丈な話し言葉。
若い時に読んだら、
太宰に〝あこがれ〟、
太宰を〝気取った〟かもしれないが、
今は、太宰に〝癒やされ〟〝許される〟気がするな。