2016年5月3日火曜日

"BabyProg"というのを考えてみた

Babymetalの「Metal Resistance」を聴きまくっているのだが、
この面白さとか素晴らしさは説明が難しい。
  
生粋のメタル・ファンなら、
これは元ネタがアレだとか、あのバンドをリスペクトしているとか、
色々わかるのだろうが、
だからこそ不快だという人もいるだろう、という気もする。
茶化しているのか?って感じがするんだろうな。

そのあたりの感覚を想像するに、

メタルは詳しくないので、
BabyMetalならぬBabyProgだったら、と考えてみた。
もしこの3人が、kawaiiプログレを演ったら、である。
最新アルバムは「Prog Resistance」だ。
プログレ・ファンからはすぐに
「精神性が……」とか言われそうだなぁ……。

冒頭曲はGenesisへのリスペクト溢れる、

「Watcher of the skies」に似た曲。
本物の轟音メロトロンが入り、
ゲストでスティーヴ・ハケット(ギター)と
リック・ウェイクマン(キーボード)が参加、みたいな。

アルバムには、

Yes「Roundabout」似のテクニカルでノリの良い曲や、
King Crimson「21st Century Schizoid Man」似のヘビィーな曲や
EL&P「Tarkus」似のゴリゴリキーボード曲や
Pink Floyd「Echoes」のような幻想的な曲が、
複数作曲陣による完成度の高い楽曲と、
スタジオミュージシャンによる高度な演奏で収められている。

ラスト曲はThe Flower Kingsも真っ青な、

キャッチーでドラマチックな20分に渡る組曲だ。

しかし歌はアイドル風少女が歌い、

歌詞は単純で、文学的でも、哲学的でも、詩的でもなく、
逆に「ドッキュン!」とか「ソイヤー」とかいった
kawaii合いの手が入る。

さて、プログレ大好き人間たちは、このアルバムをどう評価するか?

まぁ、プログレ好きだと言っても幅が広いから難しいが、
バンド名などはそれぞれ自分用に入れ替えてみるとして。

そんなことを耳にし、音を想像しただけだと

まず、バンドとしては見なせないだろうな。
っていうか、〝企画物/まがいもの〟感に溢れていると思うだろう。

メンバーの女の子が


「一番好きなのはRobert Frippのギターです」


みたいなことを言ったとしても、ふんと鼻で笑うだけだ。

むしろ〝言わされてます〟感が強まる。

こうやってBabyprogを考えてみると、

Babymetalに対する生粋メタラーの
生理的・反射的な反感や嫌悪感は想像出来る。

しかし、仮にもプログレッシヴな音楽の愛好家が、

プログレの文脈〟に縛られて
Babyprogを見る必要があるのか? と思うのだ。

そもそも1970年代のプログレバンドたちは
当然のことながら自分たちが〝プログレ〟だなんて
これっぽっちも思っていなかったわけだ。
当然〝プログレの文脈で見る/聴く〟ことなど
ありえなかったのだ。

つまり、当時の〝プログレ〟バンドたちを聴いて、

ジャズ文脈から、グルーヴが無いとか、
クラシック文脈から、騒々しくて繊細さに欠けるとか、
ポップス文脈から、テクニック至上主義だとか、
それまでの〝文脈〟に照らして
新しさを、逸脱だと批判しているのと同じなのだ。

当時のバンドは、

そうした様々な音楽的要素を組み合わせながら、
新しい音楽を作り上げたのである。

Babyprogというは、そういうバンドなのだきっと。

  
だからBabyprogが有名プログレバンドをリスペクトしても、
それは当時のバンドが

「ジャズの影響は受けているね。」

「ストラヴィンスキーは好きで、小さい頃から良く聞いていたよ」

みたいなことを言うのと同じなんじゃないか。


大事なのは、他の誰もやったことがないことをやることであり、

その中身が凄いか凄くないか、だけだったはずなのだ。
その部分に対しては、とにかく一途で、本気で、真剣だった。 

Babymetalを聴いたり見たりしていると、

プロデューサー側に
メタルへの思い入れや実験精神はあるにしても、
この3人からは、何か新しいものを作り上げ、伝えたいという、
本気が伝わってくるのである。
それが口先だけのものとか、言わされている事とかではなく、
純粋に全力でそこを目指している感じが、
小さい頃から鍛え抜かれたプロフェッショナルな歌とダンスから
ひしひしと伝わってくるのだ。

kawaii要素はあっても、sexyな要素を排除している点も、

実はとても大事な部分であって、
そこから3人のアスリートのような真剣さが伝わってくる。
kawaiiと思って見ていると、実はkawaii要素は一部で、
トータルに感じるのは、感動するほどの格好良さなのだ。
だから一般の女性ボーカル・メタルバントと比べても
サウンドバランスが異質なのだ。

この〝本気〟に触れてしまったら、

Yesに似ているとかGenesisっぽいとか、
メンバーがキース・エマーソンが誰か知っているかどうかとか、
そんなことはもう、あまり関係なくなるんじゃないだろうか。
それはそれとして楽しめるた上に、
決して安易ではないミクスチャーの魅力が見えてくるだろう。
ここがとても大事なところだと思う。

むしろ当人たちはプログレ・バンドのことなど

まったく知らなくて良いのだ。
それがどんな文脈で今語られている音かは関係なく、
今自分たちが作り上げようとしている得体のしれないものと、
必死に格闘していれば、それが何よりの魅力であり、
結果的に非常に〝プログレッシヴ〟なものになる気がするのだ。

プログレ界隈はいまだに、

〝トニー・バンクス風な分厚いキーボード〟とか、
〝アンディ・ラティマー風な甘美なギター〟とか、
〝ロバート・フリップ風ロングトー〟ンとか、
〝アニー・ハズラム風美声ボーカル〟とか、
そんな表現でしか語れないバンドで満ち溢れている。

もしBabyprogだったとしたら、

何かそのあたりを突き抜けてくれそうな
淡い期待をしてしまうだろうな。

きっとメタルでも同じなのだ。

〝メタルの文脈〟で評価しようとしたら、
そこから逸脱した部分ばかりが目につく。
でも〝メタルの影響を受けた新しい音楽〟だと楽しめる人には、
今まで感じたことのないゾクゾク感を味わうことができる。

ちなみにワタシは、SU-METALが朗々と歌い、

YUI-METALとMOA-METALが狂ったような合いの手を入れる
緻密に構成された組曲とか、ぜひ聞いてみたいと思う。
それが世の中的に〝プログレ〟の範疇に入るかどうかは関係ない。
今まで刺激されなかった部分が刺激されるに違いない。