2017年3月13日月曜日

「屈折くん」和嶋慎治


 
屈折くん」は日本最強のハードロックバンド
〝人間椅子〟のギタリストである和嶋慎治の自叙伝だ。
  
20代前半でイカ天バンドブームに乗りデビューしながら、
その後、苦節を重ね、50歳を間近にして
ようやくバンドで生計を立てられるようになったという、
波乱万丈の物語である。
  
バンドブームの到来とともに、
音楽活動に身をやつす日々。
バンドブームの終焉とともに、
肉体労働に明け暮れる日々。

そのまさに〝屈折〟した生き方が、
読んでいて痛々しいほどだが、
それでも音楽だけは決して忘れることなく、
地道に「人間椅子」としてアルバムを出し続ける。
  
その紆余曲折を追いかけていると、
何て自意識過剰なんだ、とも思うし、
何て生き方が不器用な人なんだ、とも思うが、
次第に、どこか求道者のような
常人を越えたたたずまいが見えてくるのだ。
  
結局、本気で何かを作り出そうとする気持ちと、
それをひたすら持ち続けるこだわりと、
そうしなければ生きて行けないという
常人や凡人とは違った〝屈折〟がないと、
人を感動させるものは作れないのかもしれない。

そんなことを感じさせてくれた一冊。
  
いわゆるタレント本や業界裏話暴露本とはまったく違う。
濃い文学作品を読み終えたような読後感であった。

もっと自由に生きてみたくなったなぁ。