縁は異なもの味なもの、それもにゃ〜こがあってのもの。
昨日わずかな時間をにゃ〜こと買い物に出かけ、「カオナシ」の根付けを手に入れてニハニハしていたら、オリジナルプリント風のTシャツが置いてあった「NMT(No More Tears)」というお店の前を通りかかった。
普段ならきっと素通しただろうと思うのだけど、レッド・ツェッペリンがプリントされたTシャツが気になりちょっと足を止めたところ、それに目ざとく気づいたにゃ〜こが「ロックTシャツ、中にもあるって書いてあるよ」と声をかけてくれたのが縁の始まり。
Tシャツもそれなりに面白いものがあったのだが、その奥の棚の本の一角になぜか数体の部気味なオブジェが並んでいて、その横に本書が置かれていた。Tシャツとはまったく関係ない一角。
並べられていたオブジェは「人形作家」という肩書きをやめ「奇怪生物生み出し人」として石粉粘土(せきふねんど)によるオリジナル造形作品を生み出している、阿部代里子さんという方の作品であった。すべて一点ものの作品であった
その一点もののオブジェを集めた作品集が本書「摩訶不思議生物型録」(阿部代里子、木耳社、2006年)である。オブジェたちの横にひっそりと置かれていたのだ。
そこにいるのはこの世の陰や影に生きている妖怪である。しかしいわゆる水木しげる的な、歴史・伝統・民話・語り伝えなどによる長い歴史の中の妖怪ではなく、阿部氏が
「その存在は、大昔から存在していて、それはまだみんなに知られていないだけ。じっと目を凝らし、自然の息吹きに耳を傾け、ラジオの周波数を合わせるように神経を中秋させればいつか必ず出会えるかもしれない」
と言う、まったく独自の妖怪たちである。
デザイン事務所で働いていたのだが体調を崩して退社し、デザインの仕事をあきらめかけた時期もあったとか。でももともと興味のあった空想生物を作り出して人形作家、そして「奇怪生物生み出し人」になったという経歴にも魅かれるなぁ。
作品はちょっと不気味でどことなく愛嬌があり、生き物の暖かさと金属的な質感、そして微細な模様が特徴。オブジェにはかなりの重みがあり、それが見た目の異形さにさらに存在感を与えている感じがした。
「もっと置いてあったんですけど、今はこれだけになっちゃったんですよ」と5〜6体の不気味なオブジェを指して店員さんがうれしそうに説明してくれた。(よくぞ見つけてくれました!)っていう感じの喜びが伝わってきた。
オリジナルTシャツ屋の奥の棚で出会った不思議オブジェと、思わず購入したその紹介本。不思議な出会いである。
かつては薄暗い電球の下には、光がともることによって逆に多くの陰や影が現れ、そうした濃淡のある世界で人は暮らしていたことを思い出した。
わたしにも見えるかもしれないなぁ。石粉粘土(せきふねんど)かぁ。面白そうだなぁ。