2010年9月22日水曜日

「COCOON」今日マチ子

  
知人から今日マチ子という
漫画家のことを教えてもらった
「今日マチ子のセンネン画報」というサイトだ
  
数日おきに雑誌1ページ分くらいの
短編作品が掲載される
2ページ分くらいになる時もあるし
1枚の絵だけの時もある
  
共通しているのは会話がないことだ
でもとても豊かな物語が
その絵やコマ割りに込められていて
別の時間がふっと流れてくるような感じなのだ

その今日マチ子の長編単行本が
 「COCOON」である

舞台は戦時中のある島
もちろん誰もが沖縄を想像するだろう
そこで戦況の激化に伴い
女学校に通う主人公たちが
看護隊として戦地に赴くことになる

「センネン画報」に通じる不思議な空気感
描き込みの少ないやわらかな線の世界
そこに踏み込んでくる残酷な現実
  
次々と死んでいく仲間たち
目の前の死という現実に
空想という繭(cocoon)で必死に身を守る
10代の少女たち

陰惨な場面を
現実のこととして描きたいという思いが
そのグロテスクさに物語が飲み込まれないようにと
ギリギリのところで踏みとどまっているような絵
  
だから
戦争の悲惨さや理不尽さを描きながらも
あくまで物語は少女の物語なのだ
少女の等身大の視線ですべては描かれる

一個連隊の玉砕を淡々とした描写で描いた
水木しげるの「総員玉砕せよ!」に匹敵するような
圧倒的な読後感に包まれる
   
ただ「総員玉砕せよ!」とは違って
主人公は兵士ではなく少女なので
戦争を批判したり
自分たちの行動に疑問を抱いたりはしない
  
目の前の現実に翻弄されながら
お国のために戦い
お国のために自決する
   
戦争の陰惨な現実の重さと
淡く柔らかな少女性が
一つの物語の中で
奇跡のように両立している
  
また凄い本を読んでしまった