2017年2月5日日曜日

「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」


「ガメラ対バルゴン」は、大映ガメラの二作目、
1966年に公開され、併映は「大魔神」だった。
どちらも大人向けの暗いストーリーという、
大映がかなり攻めていた時期の一作。
  
特撮怪獣映画で先をゆく東宝はこの年、
「フランケンシュラインの怪獣 サンダ対ガイラ」と
「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」を公開した。
  
「サンダ対ガイラ」は、いわば
日本特撮怪獣映画の頂点とも言える作品。
人が食われるショッキングが場面が描かれる 
堂々たる大人向けの作品だ。
  
ゴジラモノの「南海の大決闘」は
コメディータッチであることや、
舞台が島に限定されていて
大都市のミニチュアワークが見られないことなど、
特撮的には物足りない作品ながらも、
一応大人向けに作られた最後の作品。

そんな、怪獣映画が子ども向けに路線変更する
ギリギリ直前の作品が
この「ガメラ対バルゴン」なのだが、
そんな予兆はまったく感じさせないほど、
ある意味、気持ち良いくらいダークな内容である。

個人的には川尻が毒サソリに刺されて死ぬ場面が強烈で、
「目が見えへん!」という叫びのリアルさに
あとあとずっとこの映画が見られなかったほどだった。
その場面で主人公の平田から「救急箱!」を言われながら、
もっさりした動作で川尻が死ぬのを待っている
画面奥の小野寺が怖い。

この小野寺のヒールっぷりが良いのだ。
と言いながらも、川尻だって平田だって、
一攫千金を狙った仲間だから、
結局善人は一人もいないというシナリオがオトナ!

そして何よりも、特撮が良いのだ! 
  
大映怪獣映画独特の
薄暗く雄大で幻想的な空気感。
ライティングの妙が存分に味わえる、
静謐な夜の美しさ。 
四つん這いの生物同士ぶつかり合う
リアルな格闘。 
爬虫類的な不気味な目の魅力。
ご都合主義的な展開もあるが、
そこを重厚な映像と確かな演技で乗り切る説得力

時代的なこともあり
差別的な言葉や誤解を招く描写には注意が必要だが、
本作が怪獣映画の傑作であることは間違いない。


 避難所にいる人々のこの不安そうな表情が良い。
戦争を経験してきた人の演技をそこに感じてしまう。


 引き締まった画面構成とライティング。


じっくりと両者が 間合いを計り合う緊張感。

琵琶湖での最終決戦。この空間の広がりと空気感が素晴らしい。 
バルゴンの奥には琵琶湖大橋が見える。


飛び道具に頼らない生き物同士のぶつかりあい。バルゴンは血まみれだ。