2009年4月4日土曜日

「勝訴ストリップ」椎名林檎

   
勝訴ストリップ」は2000年に椎名林檎が発表したセカンドアルバムである。1998年「歌舞伎町の女王」、「ここでキスして」のヒットはなんとなく耳にしていた。その巻き舌を入れた独特の歌唱法と、キツさのある声質が自分のどこかに引っかかっていたんだと思う。

2000年は、新設校の準備として駆けずり回った疲労困憊の状態で、そのまま新設校開校になだれ込んだ年。準備で体力的にも精神的にも皆かなり参っていたのに、その状態がスタートだという過酷さ。それも机上の計画を、生身の、それも複雑なバックグラウンドを持つ生徒相手に、一つ一つ実現させていくと言う綱渡りな年。

新設校開校とともに閉校になる学校が全日、夜間定時と2校も同居するという非情な環境の中で、日々が戦いだった。そんな時聴こえてきたのが「ギプス」。悲しいメロディー、やさしい声、そして静から動への一気に展開してからの力強い声、ハードなバック。染みる歌詞。

 「あしたのことは わからない
  だからぎゅっとしていてね ダーリン」

このドラマツルギーはプログレじゃん。ほとんど知らない歌手なのにこの一曲でアルバムを買った。やっぱこの雑多性と、どんなジャンルも突き通してしまうボーカルの力。凝ったサウンドプロデュース、言葉の組み合わせが作り出す不思議な世界、プログレじゃん。いや、ジャンルはいいんだ。プログレ魂を揺さぶる音だということだ。

驚くのは、これだけハードで様々な音が実に緻密に詰め込まれたバックに、歌が全然負けていないということだ。そして巻き舌に感じられるようなぶっきらぼうな部分と、ガラス細工のような弱さが同居していること。音と詞と声がグサグサ刺さってくる。

そして技術的な面も含めて、彼女は圧倒的に歌が上手いのだ。バックに負けないのは声質だけではない、それだけの迫力と表現力を彼女が持っているからだ。彼女の歌の上手さはもっともっと注目されていい。

「貴方に降り注ぐものが譬え雨だろうが運命だろうが
            許すことなど出来る訳ない
                此の手で必ず守る
                そばに置いていて」
(「闇に降る雨」より)

この頃の歌詞はまだ比較的分かり易いストレートなものも多かった。2000年の辛さは、この「勝訴ストリップ」で切り抜けることができたと言っても過言ではないのだ、大げさに聴こえるかもしれないけど。

以来林檎病である。どのアルバムも傑作だけど、当時の自分を支えてくれた点で本作の印象が強い。聴くと力が湧いてくる。

もちろん東京事変も好き。