2009年4月21日火曜日

「荒木経惟写真全集第3巻 陽子」荒木経惟

  
荒木経惟写真全集第3巻 陽子」(荒木経惟、平凡社、1996年)は、平凡社が出した「荒木経惟写真全集」全20巻の中の第3巻、タイトルの通り、天才“アラーキー”こと荒木経惟の奥様である陽子さんの写真を集めたものだ。

東京人生 SINCE1962」を買って、そのモノクロームの魅力に魅かれ、今度は風景中心よりも、人物を撮った写真が見たいと思った。エロ全開写真もまた“アラーキー”らしいんだけど、この表紙の写真がとてもすてきで、思わず購入してしまった。家に帰ったら届いていた。すでに夜遅かったが、見始めてしまった。

荒木夫人陽子さんは1990年に亡くなられている。この写真集は陽子さんとの出会いから、1971年に結婚し、約20年生活を共にしていた女性の、実に様々な表情を切り取った作品だ。写真に写っている女性は、“恋人”であり、であり、愛人であり、少女であり、婦人であり、娼婦であり、淑女”であり、でもそのどれでもないようでもある。その収まり切らなさに引き付けられる。
   

   
陽子さんという奥様の持つ、どこか奥深い何かを見つめているような視線や表情の力、“アラーキー”がそれを追い求め、引き出す力。無防備に自分をさらしている陽子さんの魅力と、それを可能にしている二人の信頼関係や愛情の深さ、と言うか、一人の男と一人の女の、結びつきの深さを感じる。
   
   
取り立てて美人というわけでもないのだけれど、魅力的な、とても魅力的な表情をする人だなぁと思う。“アラーキー”が惚れ抜いたのが伝わる。その思いが伝わるから見ているうちに陽子さんに惚れてしまう。だからなおさら最後は泣けてくるんだけど。

陽子さんの文章も載っている。
   
「また明日も来てあげるから、と言いながら彼は私の右手をギュッと握りしめる。それは握手というより、夫の生命力を伝えてもらっているような感じで、私はいつも胸がいっぱいになった。彼の手は大きくて暖かく、治療に疲れて無気力に傾きそうになる私の心をゆさぶってくれた。」
   
  
既発の写真集からのセレクションだけど、宝物のような一冊。

(写真及び引用文はすべて本書より)