2009年4月16日木曜日

「良いセックス悪いセックス」斎藤綾子

タイトルからして本屋でカウンターへ持っていくのに気が引ける「良いセックス 悪いセックス 」(斎藤綾子、幻冬舎文庫、2003年)。でもポップなデザイン、そして飾らないストレートな文章が心地よい一冊。
   
   
内容はsexに関係したエッセイ&短編小説だ。エッセイには悩み相談室や気に入った本の書評的なものも含まれる。ただし、sexを題材にしたエッセイはかなり過激。

でも過激と言えば過激なんだが、暗くならずあっけらかんとしている。自然体である。sexを素材としながら、男女間の気持ちのズレみたいなものも描かれる。特に小説の方ではその恐ろしさまで。

まず巻頭の「超セックスライフ・チェックシート」が面白い。本文を読むと「斎藤綾子度・チェックシート」だとわかる。
  
「□ オナニーを17回連続でやって、目眩がしてやめたことがある。」
  
とか
  
「□ 胸に手を当てるよりも、股間に中指を入れて考え事をする方が多い」
  
には笑った。全体に、妙に淫靡になったり説教臭くなったりしない軽やかさがある。

エッセイは、著者本人の体験を赤裸々に語った実体験に基づいたもので濃い。著者の気の強さや、一見無軌道に見えるsexライフも、逆にそこまではっきり恋愛とか生殖とかと線を引いてしまうことへの潔さみたいなものを感じて心地よい。もちろんsexに恋愛感情は要らないとか言っているわけじゃないんだけど、でも

「そっか、恋愛って持続させなければいけないもんじゃなかったのよね。私ってば、いつから長続きしなくちゃ恋愛じゃないと思うようになっていたんでしょうか。バカです、ホントに。
 そんなわけでホットな恋愛は持続しないし、恋愛を持続させようとすればセックスは冷めるってことを私は身を持って体験しました。そして出た結論は、浮気も行きずりも、タブーなんてクソくらえ!!ってことです。メロメロに惚れた相手と気持ちいい関係を続けるには、やりたいことはバンバンやるべし。自分の感覚がさびるような関係なんか、コッパになって当然ザンス。」(本文より)

なのだ。それまでは恋愛にこだわらずsexをしまくっていた彼女が、一人の相手との恋愛に挑戦し6年間頑張った末の文章である。あらゆることを試した末の境地みたいでスゴイ。

もちろん見習いたいわけではない。でもそういうsexもあるし、そういう恋愛もあるんだって思うのだ。「好き」という感情を「恋愛」や「結婚」にリンクやシフトさせないで、そのまま「好き」でい続けるという関係っていうか。

大好きな人を大切にしたい。そして大好きな人とのsexも大切にしたい。そういう結論じみたことに落ち着こうとする本ではないんだけど、そんな気持ちになった本だった。肌をくっつけ合うことに対して幸せを感じる感覚が、お互いの間でどのくらい近いかって、とても大事なことだなぁとつくづく思った。

なんかこう元気をもらった気がするのであった。かなりエッチな本ではありますが。