昨年の春に伊香保温泉に行ってから、早いものでもう一年が過ぎるのだなぁ。伊香保に行く道すがら、バスの窓から梅林が見えたことを思い出す。神社から山頂に向う遊歩道には雪が残っていたっけなぁ。一年が過ぎるのは早いものだ。
今年は春の旅行はあきらめていたのだけど、震災とそれに続く交通状態や計画停電などを考えると計画しないで正解だったと思う。原発も余談を許さない状態が続いているし余震もまだ思い出したように起こるし、いろいろな意味で恐くて遠出することは無理だったろう。
でもやっぱり春を感じにどこかへ行きたいということで、横浜は根岸にある「三渓園(さんけいえん)」に、にゃ〜こと行ってきたのだ。「三渓園」は生糸貿易で財を成した横浜の実業家である原三渓の元邸宅だそうで、京都や鎌倉から歴史的建造物を移築し、明治39年(1906年)に一般に公開したものだという。
広大な敷地に様々な場所から移してきた美しい日本家屋が違和感無く散在し、その間を何とも不思議で懐かしい里山のような風景が取り囲む。今日は穏やかな陽射しで風もなく、それはそれはまるで桃源郷のような世界を堪能してきたのだ。
梅の季節は終わり桜のつぼみがあと数日で開き始めるという、お花見には残念な時期だったのが逆に幸いし、花見客で賑わうわけでもなく、迷惑な団体もおらず、人もまばらで、本当に静かに日本の古き建物と、郷愁を誘う何げない景色の数々を、ゆっくり味わうことができた。
でもこうした歴史的建造物の美しくも重々しいたたずまいだけでなく、それぞれの建物の間の散策路も、何げない風景なのに歩いているだけで懐かしくもゆったりした気持ちにしてくれるのだ。
それは山肌に建物が建ち並ぶ内苑に行くと、より強く感じられるようになる。起伏のある場所に建てられた建造物。それらをつなぐ石段、橋、苔むす庭、ねじれた松の老木、竹林、わき水が山肌を流れ小川になる音。静かに流れる時間。
別世界に迷い込んだような不思議な感覚。人工的に作られた場所なのに、自然と建物が一体となってあたたかい日本の原風景のようなものを作っている。
もちろん元々手入れの行き届いたそんな美しい場所であることは確かなんだけど、それに加え、きっとまばらな入園者、暖かな気温、やわらかな陽射しが作り出した、夢のような特別な時間だったんじゃないかっていう気がするのだ。
にゃ〜こと一緒におしゃべりをしながら、ゆっくり園内を散策し、春の景色を味わった。本当にすてきな時間だった。
「三渓園」には根岸公園の廃墟同様に、昔何度か一人で足を運んだことがある。でもこんな豊かな景色を味わったのは今回が初めてだった。
いろいろな条件が重なったとは言え、やっぱりにゃ〜こがいてくれたからだと思う。その安心感と、その時々の発見や感想を語り合える人、わかってくれる人、一緒に楽しめる人の存在がとても大きかった気がする。とっても素敵な日帰り小旅行となった。
日頃運動していないわたしは、根岸駅から徒歩片道30分(だから徒歩で行けるとはパンフレットには書かれていない)、園内の高低差のある場所を散策すること約3時間という歩け歩け大会は、のんびりしたペースでのお散歩ではあったけど結構こたえたのだった。
でもそうやって外に出る機会を作ってくれたことも、にゃ〜こに感謝である。