藤子・F・不二雄の数あるマンガの中で、なぜか具体的な理由がはっきりしないまま“封印”されていた作品がある。それがあの有名な「オバケのQ太郎」なのだ。絶版状態が続いていたのである。
「ドラえもん」は書店の児童マンガコーナーに所狭しと置かれていて、オリジナル作品以外にも映画のマンガ版など、次々と増え続けているというのに。
「ウルトラセブン」の第21話「遊星より愛をこめて」など、シリーズの中で特定の話が封印されている場合があることは「封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)」(安藤健二、大和書房、2007年)に詳しい。ハードカバー時のタイトルは「封印作品の謎」(太田出版)だ。
しかしシリーズ全体がまるまる“封印”状態というのもある。「オバケのQ太郎」もそれにあたり、「封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)」(安藤健二、大和書房、2007年)で、かなり執拗に理由を追っている。ちなみに、ハードカバー時のタイトルは「封印作品の謎2」(太田出版)だった。
特定の話が封印されて現在入手不可能な場合というのは、“差別表現に抵触する恐れがあるための自主規制”と思われるような場合が多いが、それでも突き詰めると、なぜそこまで過敏に自己規制することになったのか不明な点が多い。
それに比べシリーズ全体が“封印”されている場合は、内容の問題というよりは、どろどろしたビジネス上の利権やら著作権上のコジレやらが関係している傾向が強く、読者や作品時代とは直接関係のないところでの問題なのだ。
「オバケのQ太郎」もそんな、結局明確な理由はわからないままに(著者なりの見解は示しているが)、読者の手もとに届かなくなっていたのだ。気づかなかった。事は静かに、しかし断固として死守されていたのだ、20年以上にも渡って。
ところが遅ればせながら、この7月の「藤子・F・不二雄大全集」で「オバQ」がめでたく“封印”を解かれ復活すること知った。
そこに至るまでにどんないきさつがあったのかにもとても興味が湧くけれど、まずは復活おめでとう!である。だって「オバケのQ太郎」の初回(前夜祭)はアニメじゃなくて舞台だった記憶をうっすらと持っている人ですから、わたし。