2009年6月23日火曜日

ウクレレとハワイと「リロ&スティッチ」

ウクレレを始めたのは、単純に“自分に合った楽器探し”をしている中でのこと。だからハワイにもハワイアンにも正直なところ知識も関心もなかった。

いや、でも全然なかった訳ではない。自分がウクレレを始めるなんてこれっぽっちもまだ考えていなかった頃。ハワイと言えば風光明媚な観光地で芸能人がオフに行くところ。ハワイアンはムード音楽で、フラダンスはちょっと失礼な言い方かもしれないが、お年寄りの間でブームのゆっくりしたダンス。

そんな偏見のかたまりのハワイ・イメージを崩してくれたのは、なんとディズニーのアニメーション「リロ&スティッチ」(写真右)なのだ。自分から見ようと思って見た訳ではない。前任校の時、ちょうど話題となっていたので、私費で購入して英語の時間に字幕で生徒に見せたのだ。

リロは両親を交通事故で亡くし、姉のナニと二人で暮らしている。友だちからは仲間はずれにされ、やがて福祉局のソーシャル・ワーカーによって、養育能力がないと見なされた姉のナニからも引き離されそうになるという設定。まさに現実の世界でのリロの悲しみやナニの悲しみが、日常的なやり取りの中でリアルに描かれる。

一方スティッチは別の惑星で「破壊」のためだけに作り出された人工生命モンスター。物語は、地球に逃げてきたこのスティッチとリロの交流を中間部に、そして逃亡モンスターであるスティッチを追いかけてきたエイリアンたちを交えてのドタバタを後半部に配した構成となっている。

全体としてのまとまりは欠ける。中盤から話がドタバタコメディー色が入り込んできて、あまりに世界観が変わっていくので興ざめしてしまうのだ。でも前半部分のシリアスな流れが秀逸。

この舞台がハワイなのだ。フラダンスを踊る場面が描かれる。これが素晴らしい。とてもきれいな動きを丁寧なアニメーションで再現している。短い場面なのだがずっと見ていたいほど美しいのだ。わたしの中でフラダンスのイメージが大きく変わった。何かこう神秘的で神聖なものになった。

そしてもうひとつ、結局、保護者としての能力に欠けると判断されたことで、リロが姉のナニのもとから引き離されることになる前の晩、ナニはリロに、言葉にならない言葉として、ハワイアンソングの「Aloha Oe(アロハ・オエ)」をアカペラで歌う。物語的にも全編中最高の場面だと言えるが、この歌がまた素晴らしかった。

歌っているのはナニの声を担当しているTia Carrere(ティア・カレル)という女優さん。わたしはサウンドトラックではなく、彼女のこの「Aloha Oe」が入っているアルバム「Hawaiiana」を探し、当時は廃盤だったのかCDでは見つからず、最終的にはiTunes Storeで見つけてダウンロード購入してしまったくらいだった(左写真)。

「リロ&スティッチ」は物語としては前半部分の丹念な日常描写が良かっただけに、エイリアンが追いかけてきたあたりからの、落ち着きのないギャグと、非現実的な展開がなければ傑作になったのにと思わずにはいられない。

でも自分の中でのハワイのイメージを一新させ、フラダンスとハワイアンソングの魅力に目覚めさせてくれた点で、わたしに取っては思い出深い大切な映画となった。それがやがて今のウクレレへとつながっているのかもしれない。だから今ウクレレ・レッスンでハワイアンの曲をやっていても、それほど抵抗がないのだ。

余談だけれど、どうしても前半のシリアスな展開で物語を見ると、スティッチの登場あたりからは、孤独なリロが妄想の中で遊んでいる姿に見えてしまうのだが。ストーリーのぶっ飛び具合といい、エイリアンの子どもっぽいキャラクターといい。実はリロはすでに福祉局によってナニからも引き離され、施設で暮らしているんじゃないか。すべては弧度のリロの作り出した世界なのではないか。

そう思うせいか、リロが痛々しいほど可愛い。