2010年10月5日火曜日

取り残された女の子

ちょっと出かける用事があり電車に乗った
とある駅で乗り換えた時のことだ

乗り込んだ車両には
お母さんと小5くらいの女の子と赤ちゃんが
優先席に座っていた
そして向かい側のドアの外に向って
女の子の名前を呼んでいた

発車の放送が流れている
小3くらいの女の子がドアに向って
小走りに近づいてきた
でもその子も恐らくドアが閉まって
はさまったらどうしようと躊躇したんだろう
ドア直前で一瞬歩みが遅くなった
そうしたらなんとドアが閉まってしまったのである
  
女の子はどうやら
ホームで母親たちを見失っていたらしい
母親たちは電車に乗り込んでからそれに気づいたようだ
閉まったドアの向こうで
女の子の叫ぶような泣き声が聞こえる

乗ったところは最後尾だった
急行待ちでホームにいた人が
女の子を指差して車掌を見た
ドアは再び開き女の子が泣きながら飛び込んできた
  
わたしはよかったねぇと思う前に
一人取り残された女の子の気持ちに共振していた
母親たちを見つけたのに目の前でドアが閉まり
知らない場所の知らない人の中に一人残された
女の子の恐怖と絶望におののいてしまったのだ
  
わずか数秒であったことは関係ない
それは数秒経ってからわかったことであって
ドアが閉まった瞬間には恐怖と絶望しかなかったろう

だから車内でお母さんに抱きしめられても
女の子はずっとずっと泣き続けていた

今自分がちょっと弱っているせいなのか
はたまた長年の仕事で身についた習性なのか
こうした強い悲しみの感情に
自分がひどく共振しやすくなっている気がする
  
おかあさん
その子を責めたり叱ったりしちゃダメだよ
今すさまじいショックに一人で耐えたんだから
しっかりと抱きしめててあげなきゃいけないよ