ちょっと出かける用事があり電車に乗った
とある駅で乗り換えた時のことだ
乗り込んだ車両には
お母さんと小5くらいの女の子と赤ちゃんが
優先席に座っていた
そして向かい側のドアの外に向って
女の子の名前を呼んでいた
発車の放送が流れている
小3くらいの女の子がドアに向って
小走りに近づいてきた
でもその子も恐らくドアが閉まって
はさまったらどうしようと躊躇したんだろう
ドア直前で一瞬歩みが遅くなった
そうしたらなんとドアが閉まってしまったのである
女の子はどうやら
ホームで母親たちを見失っていたらしい
母親たちは電車に乗り込んでからそれに気づいたようだ
閉まったドアの向こうで
女の子の叫ぶような泣き声が聞こえる
乗ったところは最後尾だった
急行待ちでホームにいた人が
女の子を指差して車掌を見た
ドアは再び開き女の子が泣きながら飛び込んできた
わたしはよかったねぇと思う前に
一人取り残された女の子の気持ちに共振していた
母親たちを見つけたのに目の前でドアが閉まり
知らない場所の知らない人の中に一人残された
女の子の恐怖と絶望におののいてしまったのだ
わずか数秒であったことは関係ない
それは数秒経ってからわかったことであって
ドアが閉まった瞬間には恐怖と絶望しかなかったろう
だから車内でお母さんに抱きしめられても
女の子はずっとずっと泣き続けていた
今自分がちょっと弱っているせいなのか
はたまた長年の仕事で身についた習性なのか
こうした強い悲しみの感情に
自分がひどく共振しやすくなっている気がする
おかあさん
その子を責めたり叱ったりしちゃダメだよ
今すさまじいショックに一人で耐えたんだから
しっかりと抱きしめててあげなきゃいけないよ