場所は学校。でも知らない場所。
ワタシは朝のホームルームにいる。
すでにその場から逃げたくて仕方がない。
今日の自分の授業を見れば、
特にいやになる要素はないのだが、
とにかく職場に、学校にいたくないのだ。
いなければいけないことはわかっている。
授業だって問題なくできるはずなのだ。
むしろ人とは違ったオリジナルな授業ではないか。
でもいたたまれないのだ。
何とかして密かに抜け出したい。
でも例え抜け出せても、行方不明はまずいから、
帰りましたの一言ぐらいは電話を入れなきゃだな……。
だったら、朝から休めばよかったか……。
「またあの先生は休みですか。
全生徒に英検を受けさせて、実績を作りたいのに。」
と、知らない同僚の誰かが声を荒げている様子が目に浮かぶ。
「そうですか、全員に英検を受けさせれば良いんですね」
ムキになって言い換えす自分の姿も目に浮かぶ。
このいたたまれなさに勝てるのは、
怒りだけかもしれないと思う。
でもそうやって、自分を押え込んできたから
ここまで追い詰められたんじゃないのか。
裏口のドアの外は崖になっている。
まるでヨーロッパの古城のように、
切り立った山のうえに建てられているかのようだ。
でもその先には古き良き里山の田園風景が広がっているのだ。
ここから一気にあそこまで飛んで行けると良いのに……。
でも飛べるかもしれないぞ……。
そんな夢。
精神的なダメージというのは、しぶといものだ。
そうそう〝乗り越える〟ことなんてできないのである。
事件や事故、それにいじめなどによる心の傷は
決して拭いされるものではないということを実感するよなぁ。
でもな〜こに触れていると、本当に安心できて、救われるのだ。
これはもう理屈ではない。体も気持ちもユルムのだ。
そういう点でワタシは、とても幸運なのだと思う。