またまた、新設校の開設準備室……らしい。
ワタシはずっと仕事を休んでいて、
久しぶりに現場に復帰したところだ。
でも、まったく見覚えのない部屋。
大きな机が並んでいるから職員室か。
部屋のあちこちに物が散乱しているし、
机上にも書類が積まれ、ところどころで崩れている。
まだまだ準備は満足に進んでいないようだが、
職員の姿は一人も見えない。
ワタシの仕事は、
やはり今仕事を休んでいる管理職の一人に代わって、
山積みになっている書類に
その人の印鑑を押すことである。
管理職に成り代わってやるわけだから
大事な仕事を任されたことになるのだろうが、
要するに、頭を使わない単純作業である。
職場復帰後の最初の仕事としては、
このくらいが適しているということなのだろう。
でも、病休中の管理職の印鑑をガンガン押すって
ちょっとマズイんじゃないか?と思う。
でも、そんなことを言っていられないくらい、
時間的に追い詰められた状況なんだろうな、きっと。
職員室の出入り口から、直接一階へ降りる階段が見え、
外に出たところに大きな立て看板がある。
どうやら隣の高校が文化祭の準備中らしい。
階段を降りて外に出てみると左手に体育館があり、
夕暮れ時の薄暗さの中でオレンジ色の照明を灯し、
たくさんの生徒が何かの準備作業をしている。
しばらくして、はっと自分の仕事を思い出し、
職員室へ戻ってみると、
同僚の職員たちが集まって仕事をしている。
でもなぜか誰もワタシに目を合わせてくれない。
仕方なく、一人の肩を「もしもし」と叩くと、
その人はワタシの手をぎゅっと握りしめて、涙ぐむ。
え?
ほかの人も同じだ。
「もしもし」と体に触れると、
その手をぎゅっと握りしめて、
切なそうな顔をしたり、涙を流したりするのだ。
あ、そうか、こちらからは見えるけど、
きっとこの人たちからワタシは見えないんだ。
そして、見えないけれど、ここにワタシがいることを
喜んでくれているんだな、と思う。
だってワタシは死んだんだから……。
ふと、そう思う。
つまり、死んだワタシを偲んでくれているだ……。
「ああ、今、触れられたような気がする、
がんばって仕事して、結局死んじゃったけど、
きっとまだこの部屋にいるんだよ」と。
そこで目が覚める。
なんてかわいそうなワタシなんだろう。
いや……ちょっと待てよ……
もしかすると幽霊なのは
彼らの方だったのかもしれないな……。
どっちにしても、ワタシは一人ぼっちだけど。