2009年2月16日月曜日

「イバラード」という世界

宮崎駿の「耳をすませば」という作品で主人公の月島雫(しずく)が、バロンに連れられて、色鮮やかな世界に飛び出す場面がある。スタジオジブリ的な世界に馴染んでいて見過ごしがちだが、そこに使われていた風景は井上直久という作家によるオリジナル世界「イバラード」だ。
  
  
井上直久は、高校の美術教師として19年間教壇に立ちながら、「イバラード」という空想世界を作り上げた。平行してマンガ家、イラストレーター、画家として活動しており、自ら作り上げた「イバラード」世界を、マンガ、文章、絵画、CD-ROM、DVDなど、様々なメディアを通して作品として発表している。

彼の中では、「イバラード」という空想上の世界が、細かなところまで作り込まれている。マンガを見るとそれがわかる。あるいは絵に添えられたコメントからもうかがえる。彼は「イバラード」の風景を描くだけではなく、「イバラード」という世界を表現したいのだ。

しかし「イバラード」の世界のしくみを詳しく知る必要はない。様々な場面で「イバラード」世界が解説されるマンガにも、正直なところ魅力は感じなかった。逆に、細かな設定を知ることで、世界が限定され絵の魅力が損なわれることだってある。
「イバラード」は、その絵が持っている幻想的なパワーに浸れればいいのだ。どこか懐かしく、気持ちが穏やかになれる世界。その絵を見た人が自分のイバラードの世界を思い描けばよい。その世界に一時入り込み、自由に飛び回れればよい。その壮大な景色、幻想的な光の乱舞を眺めて、ぼうっと時間が経つのを忘れればいい。


久しぶりに「イバラード博物誌」(架空社、1994年)を開いて、別の時間の流れを感じることができたのだった。

あぁこの絵に描かれている小さな家に行ってみたいなぁ。