2009年2月7日土曜日

「Sink」 いがらしみきお

「Sink」(いがらしみきお、竹書房、2002年、2005年)は、いがらしみきおが“構想20年、執筆4年”という膨大なエネルギーを注ぎ込んで作り出したホラーマンガの傑作である。あの「ぼのぼの」のいがらしみきおである。
   
   
『いじめる?いじめる?』のシマリスくんが出てくる「ぼのぼの」である。今はもう言わなくなったけど。実は相当強いヤツだということがバレてしまってるからかなぁ。「ぼのぼの」も大好きで、今出てる30巻まで全巻揃っているくらいなのだが、ギャグマンガ的な装いを持ちながら、結構任侠的だったり哲学的だったり、奥の深さがまた魅力。様々なキャラクターも出てきてそれぞれ独特の個性を発揮する。

「ぼのぼの」の話ではなかった、「Sink」だ。これは当初ネットで連載されて話題になり、それが2005年に完結、全2巻として発売された。まずページをめくって驚いた。絵のタッチがまったく違う。「ぼのぼの」の線の細い絵からは想像もできない陰影の深い不安をかき立てる絵。

漫画的とも劇画的とも言えない不思議なタッチ。そして日常の中に少しずつジワジワと現れる怪異。気づかないところで進行している何か。理由のわからない恐怖がしだいに大きくなっていく。
でもどこか「ぼのぼの」が持っていた、ワケの分からないモノへの関心や恐怖などにつながっている気がする。そこだけ抽出して純粋培養してできあがった、いがらしみきおワールドだ。

   
   
単に怖がらせるだけのホラーでもないし、怪物や殺戮者に追われるというような分かり易い構成でもない。でも「世界の根本的な何かが崩れて行く」という恐怖や不安を味わえる作品だ。凄いとしか言いようがない。
なお2007年には「モダンホラー傑作集ガンジョリ
」というホラー作品も出ている。こちらは短編集なので、より直接的に怖い。

しかし読むなら「Sink」が先だ。
今不安定なわたしが読むべき本ではないかもしれないけど。