そこでさらに感じたのは俳優人の違い。「ゴジラ」は「七人の侍」の志村喬(山根博士)、河内桃子(山根博士の娘)、宝田明(山根博士の弟子にして河内桃子の恋人)、平田昭彦(山根博士の弟子、芹沢博士)、そして「七人の侍」の志村喬。それぞれの思い、対立、決意に説得力がある。河内桃子可愛いし。
対する「大怪獣 ガメラ」は船越英二(日高博士)、山下洵一郎(新聞記者)、霧立はるみ(日高博士の助手)。演技が軽い。それぞれの関係も薄い。霧立はるみ可愛くないし。
特撮場面はやはり、人間ドラマがいかに丁寧に作られているかにかかっている。平成ガメラシリーズの成功は、特撮の技術、怪獣の演出の素晴らしさに加え、人間ドラマの質の高さが大きい。

そして怪物もほとんど全貌を現さない。ひたすら逃げる主人公たちの、目の前に死が迫る恐怖と、人の死に直面した心理的葛藤が描かれる。だから逆にわずかな怪獣登場場面が活きる。

次の日本怪獣映画が作られるとしたら、ぜひ「個人の人間ドラマ」をしっかりと作り込んだ上で、既存の怪獣に寄りかからない、「新しい怪獣・怪物」を登場させて欲しい。既存の怪獣を使い回しているうちは、その枠から外へは出られない。