2009年2月6日金曜日

「スモールプラネット」 本城直季

競馬場の巨大なジオラマ(ミニチュアの立体模型)セットの写真に小さな文字で small planet naoki honjo とだけ書かれた繊細で美しい表紙。

ん?ジオラマでこんな巨大で精緻なセットが組めるか?合成写真か?とよくよく見ると、これは現実の写真なのだ。ジオラマ風に見えるのは、撮影者の技術とセンスによる新しい写真のカタチなのだ。

「スモールプラネット」(本城直季、リトルモア、2006年)は話題になったこともあってその存在は知っていたし、興味もあった。でもなかなか本屋に行って探そうという余裕もなく、写真集だからネットで注文するのではなく実際に手に取って中身を見てから買いたいという気持ちもあった。

   
    
そうしているうちに時期を逸してしまって、もうこの本のことも忘れていたのだが、たまたま立ち寄った本屋で出会ってしまったのだ。まさに、こういうのって“出会い”だなぁと思う。

この写真集の魅力はいろいろな語り方ができると思うけど、今の自分という視点で見ると、とても自分を支えてくれる写真集であった。まずなんと言ってもその独特なジオラマ風な現実が自分のアタマを混乱させているのが楽しい。固まったアタマがほぐれるような感じ。

道行く人や街路樹、駐車場の車など、普段よく見ているはずのものが、手に取れるミニチュアのような新鮮さに溢れている不思議。そしてこれまたジオラマ風な美しい色と、なぜか手作り感を宿す自然の木々、浜辺などの自然の景観。

そもそもジオラマ作りは世界の作り手になる行為だ。創造主の視点で小さな世界を自由に作る喜びと、その世界の中で自分が自由に歩き回る想像をする楽しみを持っている。この写真集を見ていると、創造主が作った自慢のジオラマを隣りで見せてもらっているような気になる。現実の厳しさから一歩しりぞいて、俯瞰することで生まれる余裕が心地よい。

そして、単純な空撮ではなくジオラマ的な風景だからこそ、こうやって距離をおいてこの世界を見た時、世界の美しさがわかる。みんな一生懸命生きている。手に取って愛でたいくらいに、すべてが愛くるしい。汚れた工事車両だってとってもカワイイ。こどもの時に砂場や浜辺で、山や城や川を作っていた時のような、ドキドキワクワクする気持ちを思い出させてくれる。周りにあるいろいろなものに興味津々だった気持ちになれる。

この世界は怖がらなくても大丈夫。

この世界にも誠実さがある。
 
そんな幸せな気持ちにさせてもらいました。ありがとう。