たびたび挟まれるコミカルな場面の〝間〟の上手さ、
部屋を俯瞰で描いた時の家と家族の見事な一体感、
画面の隅々にまでただよう安定感と温かみ、
夫婦が見せる他愛ない絡みの予想外なエロチックさ、
呉の家の足の悪いお母さんの立ち居振る舞いの自然さ、
呉の姉が見せる複雑な心情が乗った細やかな演技、
すずの絵を効果的に挟んでゆく計算された演出、
すずを襲う悲劇の後に畳み掛けられる実験的な手法の斬新さ、
上空からの爆弾投下や機銃掃射場面のリアルな恐怖、
射撃音、爆発音、落下音(爆弾、焼夷弾、破片)の生々しさ、
泣かそうはせずに常に距離を置いたような演出の巧みさ、
コトリンゴの胸に突き刺さる歌、
そして、場面に合わせて変化するすず(のん)の神がかった声、
一瞬たりとも緩まない、濃密な2時間、
大傑作。
丁寧に日常の物語を積み重ねたことで辿り着けた
終盤の凄惨な場面の重み。
それが希望の光へと変化するラスト。
でも考えてみれば
あの戦災孤児の女の子も間違いなく被爆しているだろう。
女の子に「夕凪の街 桜の国」に出てくる
平野皆実と同じ運命が待ち受けていても不思議はない。
希望の光は、悲劇に消えるかもしれないのだ。
それでも人は、どこかに、何かに、
暫定的に希望を見出して、
今を生きるのである。
すごい作品が生まれたものだなぁ。
二回見たけれど、まだまだ見足りない。
しかし、上部の予告編の静止画の構図の何たる凄さよ……。
しかし、上部の予告編の静止画の構図の何たる凄さよ……。