たまたまテレビで目をして、
その強烈な富士の絵(本書の表紙)
「山海図絵(伊豆の記憶)」にたちまち魅了されて、
今まで聞いたこともなかった画家だったのに、
即、ネット注文して買ってしまったのが、
この「不染鉄之画集」である。
2017年、没後40年を記念し、誕生の地である東京と、
晩年を過ごした奈良の2カ所で開催された展覧会で、
突如姿を現した無名の画家・不染鉄(ふせんてつ)。
と本の解説にあるので、
実際に、最近〝発見〟された画家なのだろう。
緻密な日本画なのだが、
幻想的で、どこか温かみがあって、
いつまでも見ていたくなるような絵。
特に農村にしろ漁村にしろ、
そこに描かれている昔の日本家屋が良いのだ。
実際にはどこも貧しい家々なのだろうが
いたずらに貧しさばかりを強調するのではなく、
穏やかな暮らしぶりがにじみ出てくる
美しい家々、そして集落なのである。
新年早々、強烈な未知の世界に出会えて幸せである。
「有名になれず こんな画をかくようになっちやった
だけどいゝよねえ」
『春風秋雨』より