2013年1月31日木曜日

「ぼくらの昭和オカルト大百科」初見健一

  
“70年代オカルトブーム再考”と
サブタイトルがつけられた
とっても面白かったのだ

「時代がどうかしてた」1970年代
雪男・ネッシー・ツチノコに
ユリ・ゲラーと超能力
そしてUFO特番に「あなたの知らない世界」
さらにコックリさんに口裂け女

1970年に開催された大阪万国博覧会の
テーマ“人類の進歩と調和”や
当時としても違和感のあった三波春夫の
能天気な歌に溢れる明るい未来像が
上記のような「イカれた時代」に変貌した1970年代
その時代背景を考察したり
自身の体験に基づく時代の空気を切り取ってみせた本

オカルトを肯定するのか否定するのかという立場に立たず
なぜそのようなことがこの時期日本に蔓延し
その後衰退していったのかを追った
懐かしくも新鮮な内容の本であった

しかし…どうしても気になった事がある
それは次の部分だ

「では、七〇年代において、この『イカれた時代』がいつはじまったのか?これはほぼ正確に特定できる。
一九七三年。
 この年、その後の約一〇年間にわたって定番となるオカルトな大ネタたちが、なぜかまるで歩調を合わせるかのように群れをなして日本を急襲し、僕らの好奇心をワシづかみにしてしまったのだ。」

すでに1971年の怪獣映画「ゴジラ対ヘドラ」に見られるように
時代の中には「暗い未来の予感」が膨れ上がってきていて
1973年第一次オイルショックは引き金を弾いただけ
そして花開いたオカルト世界ということなのだ

【1973年】
「日本沈没」→ 終末気分
「ノストラダムスの大予言」→ 人類滅亡
「石原慎太郎の国際ネッシー探検隊」→ ネッシー・ブーム
「幻の怪蛇バチヘビ」矢口高雄 → ツチノコ・ブーム
「お昼のワイドショー“あなたの知らない世界”」→ 心霊ブーム
   
【1974年】
「恐怖の心霊写真集」→ 心霊ブーム
 ユリ・ゲラー来日 → 超能力ブーム

などなどが1970年代日本を覆い尽くすことになる

実は今からちょうど40年前となるこの1973年 
プログレの勢いが凄まじかった年でもあるのだ
この年に発表された作品群はなかなか濃い

・「太陽と戦慄」(Larks' Tongues in Aspic)King Crimson
・「狂気」(The Dark Side of the Moon)Pink Floyd
・「恐怖の頭脳改革」(Brain Salad Surgery)EL&P
・「月影の騎士」(Selling England by the Pound)Genesis
・「海洋地形学の物語」(Tales From Topographic Oceans)Yes
・「自由への叫び」(Arbeit Macht Frei)Area
・「幻の映像」(Photos Of Ghosts)PFM 
・「パレポリ」(Palepoli)Ossana 
  
などなど…

この1973年はそれぞれのバンドの創作エネルギーが
ピークに達したと思える時期である 
先陣を切ったイギリスに比べ
その影響を受けた他国のピークが遅くなるのは仕方ないが
いわゆる第一陣たる開拓者たちのピークは
この1973年にあると言い切っても良いくらいだ

というようなことを考えると
この1973年…あるいはその前後というのは
何か大きな転換点だったんじゃないだろうか
という気がしてきてしまうのだ
人間の精神的な活動が異様に活発化し 
得体の知れない衝動が吹き出した時期
そんな歴史的シンクロニシティーが
もしかするとあったのかもしれない…とか

1973年ほどではないにしても
ことしも何か大きな変化の年になるかもしれないなぁ