2016年6月11日土曜日

「宇宙戦争」副牧師の叫び

火星人のすぐ近くの廃屋に閉じ込められた
主人公と副牧師。
ついに副牧師が理性を失って叫び始めます。
前半が「」、後半が「副牧師」の言葉です
  
  
「黙れ!」私は立ち上がって、火星人たちに二人の声が聞かれないようにビクビクしながら言った。「頼むから——」
    
「いやだ」副牧師は声を限りにそう叫び、私と同じように立ち上がると両腕を広げた。

  
問題となったのは、このあとに続く副牧師の言葉。

  "Speak!  The word of the Lord is upon me!"

以下、出版されている邦訳書からの2例です。

・「語れ! 神のみ言葉は我にあり!」
「かたりなさい! 主のおことばはわれにあります!」

ん?って感じ。

副牧師が「私」に向かって「語れ!」って言っているの?
自分が黙るんじゃなくて、
逆にあなたも一緒になってしゃべれってこと?
そして、「われにあり」って何?
自分こそが神の言葉(福音)を受ける身、
つまり正しいんだよってこと?
ん? ん?

とても大事な場面です。
でも腑に落ちない。しっくりこない。
読んでいて、気持ちや場面がうまく流れない。
第二稿のためのチェックをしていて
どうしても引っかかってしまったのです。

う〜ん、う〜ん、う〜ん……
そこではたと気づきました。
「語れ!」は神が副牧師に向かって言った言葉だと。
つまりこういうことです。

「『語りなさい!』 主がわたしに、そう言っているのです!」

だから自分は黙りはしないのだ、と。
これならつながります。流れます。すっきりします。
ちょっと格好つけてこんな感じででも良いかも。

語りなさい!』 そう私に、主の御言葉があったのです!」

実は「私」の「頼むから(For God's sake)」は
文字どおり訳すと「神のために」となり、
英文で読んでいるとこの副牧師の言葉に
  
(神のことを言うのなら、神は私の味方だ)

という対抗意識のようなニュアンスが

感じられるようになっているのですが、
残念ながらそこまでは訳しきれませんでした。
  
ふぅ。
とりあえず一山越えたかな。