2015年1月10日土曜日

「おもいでぽろぽろ」に涙

なんと緻密で自然な動き。
例えば車の乗り降りの正確な動き、発進と停止の人物の揺れ。
ちょっとした人物の表情やしぐさ。そして絶妙な間。
紅花をもぎる手の動き、 力の入れ具合、タイミング、間。
派手ではないんだけど、実に濃い映像だ。

モノローグが説明調なのがちょっと気になったけど、

アニメーションの豊かさでバランスが取られている。
  
そして懐かしい昭和の学校、テレビ、街の風景。
  
都会で自分を見失った女性が
大自然の中で農業に生きがいを見つけ出す、
という単純な話ではない。
  
いろいろなことが今の自分につながっていて、
何かを始める時には何かを思い出す。
何かが始める時は何かが思い出される。
そうやって人は前に進む。
そんな瞬間を描いた作品。
  
思い出される小学5年生の頃のエピソードは
一つ一つが実は辛いものばかりで、
ワタシも自分の小学校時代を思い出した。
あの何とも言えない
思い出したいような思い出したくないような日々。
  
でもそういう中を生きてきた自分に
今の自分も支えられているんだなぁという感情が、
最後の最後に押し寄せくる。
  
タエ子が決心を固めることではなく、
それを小学校5年の自分とクラスメートたちが
みんなで応援している映像に涙が出た。
  
なぜ泣けてくるかわからないんだけど、
これは確かにアニメーションではなければ作れないラストだ。
これは傑作だわ。
  
もちろん「となりのトトロ」のファンタジックな田舎に対して
高畑勲がリアリスティックな田舎で応じた作品でもある。