リライトして“児童文学”としても紹介されることのある
古典的な吸血鬼物語だけれど、
ぜひその妖しく少しエロティックな原作を
完訳で読んでいただきたいのである。
派手な殺戮シーンとか対決シーンとかは無い。
どちらかと言えばモダンホラー的な静かな展開である。
とは言ってもそれほどの刺激は無い。
でも人里離れた森の中に建つ古城や
断絶した伯爵家の城、村、教会の廃墟や
怪しい流れ者(芸人&物売り)など、
古きヴィクトリア 朝時代の妖しい世界が
実に魅力的なのだ。
語り手であるローラの個人的な体験が
また何とも不思議な怖さを醸し出す。
いつも通りにめっぽう疲れたけれど、
訳していてとても面白かったのである。
おそらく完訳の書籍としては
1970年の平井呈一氏訳以来であろうと思う。
今回もまたワタクシ的には渾身の一作(邦訳作)だ。
ぜひ多くの人にお楽しみいただきたいなぁ。