高1くんは保育園時代に一度、
小学校時代にも一度、
スイミングスクールで水泳を習ったことがあるのだ。
それでも泳げなかった。
保育園時代にも小学生時代にも
外からガラス越しに様子を見ていたことがあるのだが、
特に水が怖いわけでもないようなのだが、
どうも一人だけ浮いていたのだ(水泳だけに…)。
まわりの子たちは、泳げようが泳げまいが
バシャバシャと楽しそうにしているのに、
高1くん(当時は“年長くん”ぐらいか)は
所在無さそうに立っているのである。
つまり、水遊びも泳ぐことも楽しく無さそうなのだ。
その高1くんが今春入学した高校は、
50m泳げないと、特別補習があるのである。
高1くんは入学当初からそのことを気にしていた。
1日だけスクールに行ってみたのだが、
基本の蹴伸びからやらされたと言っていただけで、
少しも進展しなかったらしい。
切羽詰まった高1くんは、先日の日曜日に
友だちと一緒にプールに行き
息継ぎを教えてもらってきたのだった。
それでどうにか25m泳げるようになったのである。
“火事場の馬鹿力”的な進歩だ。
その勢いを駆って何とか50mまで泳げるようにと
昨日も一人でプールに行ってきた。
でも途中で足がつってダメだったらしい。
そしていよいよ今日の体育の授業で、
50m泳げるかどうかの見極めが行われた。
50mとは言っても、25m×2なので
一瞬中休みは取れるのであるが、
それでも高1くんにとっては未知の領域への挑戦である。
そしてなんと、両足がつりそうになりながら、
50m泳ぎ切ったのだった。
残り10mは息継ぎもせずに死にそうだったらしいが、
帰ってくるなり「オレは天才だ!」と言うので
「すごいぞ、天才だ!」と誉めてあげた。
泳げる人にとっては何ということもない距離であろう。
でもワタシ自身、水泳は苦手で苦労したので、
その辛さは良くわかるのである。
特にワタシの場合は、高校が50mプールだったから
水泳の授業がイヤでイヤでたまらなかったのだ。
そんな憂鬱な時期が、毎年確実にやって来ていたのだ。
ワタシもはるばる1時間半かけて
一人で何回か温水プールに通い、
どうにか50m泳げるようになったが、
「残り10mは息継ぎをしない」苦しみは痛いほどわかるのだ
高1くんの場合は、そのお友だち様様だけど、
友だちに頼んでまでプールに行ったというのも
カッコつけたいお年頃としては、ずいぶん頑張ったものだと思う。
良かった良かった。
何だかホッとしたのである。