基本的にガチャガチャは育った年代+造形的な面白さ(美しさ)から、ウルトラヒーロー&怪獣系がほとんどである。仮面ライダー系、戦隊系には興味がない。
しかし、このシリーズだけは買ってしまった。ド根性野球マンガ「巨人の星」(梶原一騎原作、川崎のぼる画)の主人公、星飛雄馬(ほしひゅうま)である。
少年時代に父、星一徹に強制的に装着させられていた、その名も“大リーグボール養成ギプス”。何がどう作用してどこがどう鍛えられて、大リーグにまでたどりつくのかわからない構造ではあるが、絵的なインパクトは強烈だった。
タイヤまでついて200円。もう最初に最高をゲットしたので、他の星一徹とか伴宙太とか星明子とかまで、買い集める気にならなかった、シリーズ最初で最後の一個である。
前任校の荷物の整理をしていたら出てきた。こんなモノで笑い合う余裕があったんだな。同僚の年代的にも。
少年時代に父、星一徹に強制的に装着させられていた、その名も“大リーグボール養成ギプス”。何がどう作用してどこがどう鍛えられて、大リーグにまでたどりつくのかわからない構造ではあるが、絵的なインパクトは強烈だった。
タイヤまでついて200円。もう最初に最高をゲットしたので、他の星一徹とか伴宙太とか星明子とかまで、買い集める気にならなかった、シリーズ最初で最後の一個である。
前任校の荷物の整理をしていたら出てきた。こんなモノで笑い合う余裕があったんだな。同僚の年代的にも。
考えてみれば「巨人の星」は、根性モノの野球マンガでありながら、その常識をはるかに越えた超人プレイ同士の戦いは、すでにスポ根ものの範疇を越え、SF的ですらあった。
しかしそこにリアリティーがあったのは、一つには、野球というスポーツを個人対個人の一騎打ち(今流に言うなら“バトル”)を中心として描きつつも、心理描写、特に独白(モノローグ)を多く取り入れたことで、人間的な面への共感を得やすくしていたこと。テレビ番組では、30分のほとんどがマウンド上での星飛雄馬のモノローグで、投げた球は数球のみのまま「つづく」なことすらあったような記憶がある。
そうした心理描写は、最後の最後に、盟友伴宙太が父一徹とともに、敵として立ちふさがり、星飛雄馬の野球人としての最後を事実上看取るというクライマックスに至る、梶原一騎の繰り出すドラマトゥルギーの上で十分に活かされ、リアリティーを影で支えていた大きな魅力だったに違いない。
そうした心理描写は、最後の最後に、盟友伴宙太が父一徹とともに、敵として立ちふさがり、星飛雄馬の野球人としての最後を事実上看取るというクライマックスに至る、梶原一騎の繰り出すドラマトゥルギーの上で十分に活かされ、リアリティーを影で支えていた大きな魅力だったに違いない。
もう一つは、常識を超えた必殺技「大リーグボール1号」、「同2号」、「同3号」などを登場させながら、その「非常識」さを「常識的説明」、当時の読者にとっては「謎解き」に力を入れていたこと、つまり、あくまで個人の才能と根性と練習のタマモノとして可能になる、理屈で説明できる範囲内の超人プレイという位置づけにした点によるだろう。あくまでカタチの上として。
だから「大リーグボール2号」、別名「消える魔球」は、なぜ消えるのかとかに、読者は「どういう謎解き」(今言えば「へ理屈」か)が待っているのか、スゴく期待をしたものだった。
そう言えば巨人という実在の球団をタイトルにまで使って、そこのスターを目指すっていう設定も前代未聞である。実在の人物が登場するというのも、リアリティーに一役買っていた部分はあるだろう。
それはともかく、当時はとにかくこの魔球の名称自体が、「大リーグ(メジャーリーグ)」は雲の上の世界だったことを物語っているな。それに加えて「1号」ってなに。「日本で最初の、大リーグで通用するほどのスゴイ変化球」というぐらいの意味だろうけれど、なんだか武器か兵器みたいじゃないか。
その巨人、正式には「読売巨人軍」、あるいは「読売ジャイアンツ」と呼ばれる、日本野球の中心的な存在で、特に1960年代は「野球=巨人」というくらいの人気であった。
しかし面白いのは、この巨人だけ日本の球団の中で唯一“巨人軍”という言われ方をするのだ。そう、まるで軍隊のように。彼らは日本人として、あるいは日本軍として、戦後も戦い続けていたのだろうか。あるいは当時の日本人は、野球という戦場において巨人軍(日本軍)が勝ち続けることを心の支えとしていたのであろうか。確か、最後まで外国人助っ人を拒否し続けたのも巨人だった。
当時の力道山プロレスのように、露骨に敵役のガイジンを倒すといった内容ではなくても、連勝する絶対的な強さを持った“巨人軍”は、スポーツとは別の意味をどこかしらに持っていたのかもしれない。
それなら「大リーグボール1号」もわかる気がする。あれはアメリカへの挑戦状なのだ。「巨人軍」の有する対戦兵器第1号なのだ、きっと。