2009年5月31日日曜日

座頭市に学んだ杖の意外な効用

腰痛で杖を使っていた訳ではない。年老いてきたから杖の一つも手に入れようかということでもない。でも、あの折りたためるやつはちょっと秘密兵器っぽくて興味はあるんですが。ここでは全然別の話。

勝新太郎の「座頭市」の殺陣(たて)の見事さはたびたび述べている。一時は仕込み杖は欲しいなぁとまで思った。仕込みの剣を使う場合は、杖として使っているところから自然なかたちとして逆手で抜くことになる。座頭市は順手ではなく、逆手の居合い切り名人という、特殊な技の持ち主なのだ。

それはともかく、逆手で剣を握るとどうしても順手よりリーチが短くなる。だから座頭市の殺陣には剣と剣がチャリンチャリンとぶつかる場面はほとんどない。居合い自体が一瞬の技だということもあるが、逆手だと剣を合わせる間合いではなく、もっと相手の懐に飛び込み、ボクシングのフックやアッパーを入れるような感じで剣を使う。

だからいつも一瞬の勝負なのだ。しかし殺陣として派手なものではなく、もみ合っているように見えてしまう。勝新太郎はうまく動きにデフォルメを少し入れながら、スピードとタメで見せる。静と動の落差で緊張感を作り出す。

話が大きく逸れた。杖の話だ。

「座頭市」を見て影響を受けて、駅中とかの雑踏で「もし仕込み杖を持って、まわりが皆敵だったら、どう使うかな」と想像したことがある。雨の日だったのでたたんだ傘を仕込み杖に見立てて。あっ、笑わないで下さいね。

相手の動きに合わせて、すれ違う瞬間に相手の右か左にギリギリで自分の体を逃がして、その瞬間に切る。腕だけで切るのではなく、カラダの移動や回転に合わせて切る。ふむふむ、こんな感じか。

そこでふと気づいた。雑踏の中で杖替わりの傘をカラダの前に構えていると、歩いている時に人を避け易いのだ。全然違う。傘を少し動かすだけで自分の重心がコントロールしやすくなるのだ。すると相手を余裕で避けることが出来る。

ならばと、傘ではなく片手の肘から前を少し突き出して歩いてみた。力まず、やってくる人々の流れに合わせて、少し腕を動かす。するとやはり重心が動かし易いのだ。ギリギリで相手の脇をすり抜けられる。)の方が楽だけど、近い効果を得られる。

あ〜、杖っていうのは、身体を支えたり、怪我した足のかわりに使ったりするだけでなく、カラダの微妙なバランスをコントロールしやすくさせる力あるんだなぁと思った。

座頭市風の杖が欲しいなぁ、とまた思った。でもできれば北野武「座頭市」で使われていた朱塗りの細身な杖がいいなぁ。

細身ではないけど、土産物屋の木刀はどうかって?確かにツカを取れば仕込みっぽくなるんだけど、仕込み杖って普通の刀のように剣が反っていないのだ。真っすぐなのだ。土産物屋の木刀だと杖にはならないんだなぁ。

いや仕込みじゃなくていいんですって。杖でいいの杖で。
流行らないかなぁ、杖。