2009年5月30日土曜日

「佐武と市捕物帖」の凄さ

Gyaoの「昭和TV」で配信中の「佐武と市捕物帖」『涙の花吹雪』を観た。凄い。やっぱりこの頃の番組は30分でも中味が濃いなぁ。

今あらためて思うのは、当時の番組には、「ウルトラQ」や「ウルトラヒーロー」ものや「怪奇大作戦」など、30分枠でよくぞここまでっていう内容の作品が多かったけど、この「佐武と市捕物帳」も凄いなぁ。
さらに独特なのは、大人向けの時代劇アニメとして、放送時間が夜9時からという異色な番組だったという。放映は1968年だから「ウルトラセブン」と同時期ぐらいか。全編白黒。これがまたいい。話の暗さが引き立つ。
   
  
内容は、江戸を舞台に二枚目の岡っ引き佐武と、盲目のあんまにして仕込み杖の達人市の名コンビが、難事件に挑む捕り物帖。原作は石ノ森章太郎だ。市のモデルは、当然「座頭市」だろうが、性格の設定が違うため、座頭市のイメージには捕われない。
『涙の花吹雪』も、捕り物と悲恋とラストの一騎打ちが、見事に30分という枠に中にまとめられている。ムダがない。

そのシナリオも上手いが、絵の使い方がまた凄い。白黒の炭で描いたような背景の深み、
コマ数の少なさをハンデとせず、ナレーションと会話で物語を進め、構図の美しさや動きのタイミング、と言うか“呼吸”や“間”で動きを描き切ってしまう見事さ。リアリティーを追わないで見せる日本アニメの真骨頂が堪能できる。

今でも十分な見応え。むしろ今の動きが強調されたアニメにはない、暗さと重みが魅力だ。やたらと複雑な設定や迫力ある映像を求めるのではなく、こういう作品を継いでいく作品はないのだろうか、と思ってしまいました、昭和の人ですから、わたし。

ちなみにちょっと調べたらDVDで全13巻、オリジナルのマンガは小学館文庫で全10巻出ている。ちょっとヤバいかも、と思っている夜中の1時過ぎ。