2015年2月10日火曜日

「白アザラシ」ではなく「白オットセイ」

「ジャングル・ブック」の
モーグリと関係ないお話の一つが
『White Seal』である。

これ、「白あざらし」と訳されているのだ。

手元の完訳本でもそうだし、
別の“モーグリ物語選集”みたいな本の解説にも
そう書かれている。

ところが原作本文中にちゃんと

“fur seal”と書かれているのだ。
つまりこれはオットセイ・・・・・の話なのである。

舞台となるセント・ポール島だって

オットセイが集まる場所として有名なのだ。
それを正せるだけでも、
今回「ジャングル・ブック」を完訳する意義はあるぞ、
と、思っているのである。

ちなみに、その話の中に

「カイギュウ(Sea Cow)」が出てくるのだが、
これも単純に

「カイギュウってことは、ジュゴンとかマナティーとかだな」


では、間違いだと思っている。


これは乱獲によって1768年(以降)に絶滅した

ステラー・カイギュウのことだと思うのだ。
文字通り“カイギュウ”という名前の動物がいたのである。

その“幻のカイギュウ”か、“カイギュウの幻”に

主人公のコチックが出会うから、
この物語に神秘性とか神話性が出てくるのである。


初版本の挿絵 しっぽはジュゴンに似ているが、
出会う場所(生息地)的にステラー・カイギュウである。

「ジャングル・ブック」が刊行が1894年。
ステラー・カイギュウを絶滅させてから126年後であり、
まさに今度はオットセイとラッコの乱獲真っ只中である。
その結果絶滅寸前まで数が減り
1911年に「膃肭獣おっとせい保護条約」が
ロシア、日本、アメリカ、カナダで結ばれるに至る。

だからどうしても、そういう時代背景から生まれた話であろうし、

そうした現実が反映されたものとしてとらえたいのである。

やりがいが、さらにアップしたぞ!