東急ハンズをうろうろしていて
何げなく手に取ったまま
中をパラパラ見るなり
レジに直行してしまった一冊が
この「妄想工作」(乙幡啓子)である。
敢えて色々と
おバカなことをやるという本もあるし
「Make」のように
大人の工作心を刺激する本もあるけれど、
この本の特徴はその両者を掛け合わせた
〝おバカな発想で物作りを楽しむ〟というところにある。
「サーモグラフィー・セーター」とか
「マンガのようなボロTシャツを作る」とか
「『捕らえられた宇宙人』エコバッグ」とか
とにかく発想の奇抜さ・くだらなさも楽しいが
できあがったものの完成度の高さがまた笑わせてくれる。
そして妄想をどうやって形にしていくかという
極めて現実的なプロセスがまた参考になるのだ。
と言っても裏ワザ満載というような技術面に偏っていない 。
この自由さと力の抜け具合いがまた魅力なんだけど。
一方で四方の壁を突き破るような妄想が暴れていながら
他方では四方に壁を建てて籠り
職人のごとき技術と執念を注ぎ込む。
そのギャップが
キリキリと締め上げられた
わたしのアタマのネジを緩めてくれて
物作り本来の楽しさを思い出させてくれる。
妄想を面白おかしく文章で披露するだけなら
場合によっては独りよがりでウケ狙いが透けて見える
イヤミなものにもなりかねないが、
実際に物を作り上げるという圧倒的な現実の前に
そんなことなど露ほども感じさせないのも良い 。
一応あれこれと物を作ることが多いわたしにとって
この本が机の上に置いてあるのを目にするだけで
狭くなりがちな視野がふっと広がる気がする。
書店じゃなくて東急ハンズで見つけたってところも
なかなか面白い出会いであった。