2012年10月26日金曜日

「妄想工作」乙幡啓子

  
先日新宿高島屋で
東急ハンズをうろうろしていて
何げなく手に取ったまま
中をパラパラ見るなり
レジに直行してしまった一冊が
この「妄想工作」(乙幡啓子)である

敢えて色々と
おバカなことをやるという本もあるし
「Make」のように
大人の工作心を刺激する本もあるけれど
この本の特徴はその両者を掛け合わせた
“おバカな発想で物作りを楽しむ”というところにある
  
「サーモグラフィー・セーター」とか
「マンガのようなボロTシャツを作る」とか
「『捕らえられた宇宙人』エコバッグ」とか
とにかく発想の奇抜さ・くだらなさも楽しいが
できあがったものの完成度の高さがまた笑わせてくれる

そして妄想をどうやって形にしていくかという
極めて現実的なプロセスがまた参考になるのだ
と言っても裏ワザ満載というような技術面に偏っていない 
この自由さと力の抜け具合いがまた魅力なんだけど

一方で四方の壁を突き破るような妄想が暴れていながら
他方では四方に壁を建てて籠り
職人のごとき技術と執念を注ぎ込む
そのギャップが
キリキリと締め上げられた
わたしのアタマのネジを緩めてくれて
物作り本来の楽しさを思い出させてくれる

妄想を面白おかしく文章で披露するだけなら
場合によっては独りよがりでウケ狙いが透けて見える
イヤミなものにもなりかねないが
実際に物を作り上げるという圧倒的な現実の前に
そんなことなど露ほども感じさせないのも良い 

一応あれこれと物を作ることが多いわたしにとって
この本が机の上に置いてあるのを目にするだけで
狭くなりがちな視野がふっと広がる気がする

書店じゃなくて東急ハンズで見つけたってところも
なかなか面白い出会いであった