レンタルビデオで見たんだったかな、
それなりに面白いけど
短いエピソードを繋いでいく展開だと
104分はちょっとつらいかな…という記憶だった。
でも、夏の過労のリハビリと、
12/3発売予定の「かぐや姫の物語」の予習として、
気軽に楽しめそうだなと思って久しぶりに見てみたのだ。
世紀末1999年の作品である。
そして驚いた…。いろいろ面白いのだ。
一つはアニメーションの完成度である。
淡い色調と手書き風なゆるい線は
まさに「かぐや姫」に通じる斬新さだ。
この雰囲気を残せたからこそ、逆に劇場映画たり得たのだ。
そしてその淡い輪郭のキャラクターが
実に“腑に落ちる”動きをするのだ。
漫画が得意とする微妙な表情、しぐさ、間が生きている。
そういう目でじっくり見ると、
一分の隙もない、胃が痛くなりそうなほどの緻密さなのだ。
例えば、ほとんど輪郭線だけのような車が走る。
でも動きはなめらかで、背景を含めて構図は決して乱れない。
そしてちょっとした揺れや傾きや、動きおタメが
実に“腑に落ちる”のである。
プロデューサーの鈴木敏夫氏が
「胴長短足のキャラクターだから、足を折って畳に座るというような簡単な動きがとても難しい。その場面だけ足が長くなるっていうんじゃ変ですから。そういう動作を自然に見せるのはやっぱりアニメーターの力量なんです。」
というようなことを言っていた記憶があるが、
ドタバタした動きも、たっぷりタメを作った動きも
とにかく絵柄に反してとても自然でなめらかで、
そう、やっぱり“腑に落ちる”という感じなのである。
これは本当にすごいことだと思う。
内容も他愛なことばかり。と思って見ていると、
ドタバタした動きのテンポの良さや、
幻想的に情景が移り変わる意外性、
余韻で見せるユーモラスさや悲しさなど、
味わい深さが多面的なのだ。
例えばこの酔っ払って帰ってきたお父さんが、
バナナをむしゃむしゃ食べる話とか、
日常的でありながら、ちょっとシュールなくらいに面白いし。
これはやっぱり傑作である。
同じ類いの映画がないという意味でもすごい作品だ。
もう一つ、面白いと思ったのは
描かれている“家族”が、すでにレトロな感じだったことだ。
ノスタルジーあふれる昭和が舞台ではない。
平成11年という、ひと昔半ほど前の時代である。
でも年功序列永年勤続型サラリーマンである父は
今はもうノスタルジックである。
すぐタバコを吸うところや、ケータイを持っていないところなど、
なんだかとても時代的なギャップを感じるのだ。
それほど昔ではないと思っている分、
不思議な違和感みたいなものがあるのである。
そしてこの三世代同居の
時々喧嘩しつつも仲の良い家族というのも、
やっぱりかなりノスタルジックである。
ああ、あの頃からすでに
時代は変わったんだなぁという感慨。