2012年8月19日日曜日

花火を見ない花火大会

午前中の腹痛の不快感がまだ残りながらも
この炎天下のもと
どうしても熱海へ行きたくなって電車に飛び乗ったのだ
頭痛も腹痛もショックによる精神的なものだろう

途中で動けなくなったらどうしようと思ったが
にゃ〜こがいなくても
にゃ〜こと一緒に毎年行っていた
熱海の花火大会見物を
今年止める気になれなかったのだ

電車の中で一息ついて
気づけば身の回りの品々は
にゃ〜こと縁が深いものばかりなのだ
携帯用折畳み傘はにゃ〜こに買ってもらった物
柿で染めた帽子も一緒に旅行に行って
にゃ〜こが買ったのを譲り受けたもの
手作り腕時計もそもそも体験教室に
にゃ〜こがついてきてくれたのが始まりだ

でもいつも隣にいた本人がいない
山が見えても海が見えても
当たり前のように声をかけていた相手がいないのだ

そんなことを思いながら熱海に着く
するともう思い出だらけだ
改札口でトイレを待っていてくれた姿が思い浮かぶ
駅前商店街を手をつないで歩いたなぁ
あぁこのお店でご飯を食べた
ここの宿に泊まった
この階段を下りた
この風景を写真に撮った
このお店で服を買ったっけ
ここではビニールシートを買ったな
ここのガラスウインドウに
二人の姿が映ってちょっと照れたっけ
この自動販売機でジュースを飲んだ

そして海岸へ到着


日焼け止め塗って歩いたっけ
ここをキャリーバッグ転がしたなぁ
いつも熱海に来ると暑い日で
それなのに歩け歩け大会になったっけなぁ


いつものルートをたどろうと思ったんだけど
ロープウェイのそばまで行って乗るのを止めたのだ

だってロープウェイの切符は
いつもにゃ〜こが買ってくれたから
窓口で切符を買っているにゃ〜この姿が浮かんで
ちょっと耐えられなくなったのだ

そのまま浜まで戻りゆっくりと遊歩道を歩く
日曜日だということもあってかなりの人出だ


熱海に来る時は海には入らなかった
だからお散歩してから宿に戻って
夕食時食べに出てそのまま花火見物だった

でも今日は泊まるわけではないから
ふらふら歩きながら立ち止まっては海風に当たっていた
またまた見知らぬ人から写真撮るのを頼まれた
にゃ〜こがいたらまた自慢できたのに…

そのうちカラダが段々きつくなってきた
やっぱり調子はそれほど良くなかったのだ…
でもとにかくあの場所へ行こうと思った
それは去年やっと二人で浜まで降りて
花火を見ることができた階段である


この階段の砂浜に近い場所に腰を下ろして
前方の海上に広がる花火の光と音を楽しんだのだ
にゃ〜こは浴衣だった
幸せだった

そんなことを思い出しているうちに
にゃ〜こが居ないのに花火を見ても
つまらないどころか辛くなるだけな気がしてきた
歓声を上げる相手がいない
握る手がない
見つめる笑顔がない

花火を見るのは止めることにした
一緒に歩いた別のルートから駅に戻り
浴衣姿のカップルが続々と駅から浜へと向う中を
帰りの電車に乗ってしまったのだった

はるばる熱海まで行って
花火大会が始まる熱気を感じながら
その花火大会は見ずに帰ってきたわけだけど
残念感は微塵もなかった
にゃ〜こがいたから何もかも楽しかったのだと
あらためてわかった

そう…にゃ〜こがいたから
元気になろうと頑張ったし
中古CD屋で少しでもお金を稼ごうと思ったし
食生活を改善しようと思ったし
料理も作れるようになろうと思ったのだ

それはいつかにゃ〜こと
一緒に暮らそうと思っていたからなのだ

だから今はもう
どれもどうでも良いような気がしてきた
それじゃいけないってわかってはいるんだけど…

またいつか二人であの階段に腰を下ろして
ニコニコと肩を寄せ合いながら
花火を見物することができるのだろうか

今日の空は
太陽に照らされた雲が恐いほど美しかった
にゃ〜こに見せたかったなぁ


こうやって文章にしていなかったら
今の状況に耐えられなかっただろうなぁ

あぁ…そもそもこのブログも
にゃ〜こに見てもらうために
病休後に始めたんだった…